冬季湛水により水田からのリンの流出が平均して26%低下
2020-06-09 京都大学
奥田昇 生態学研究センター准教授は、広島大学、総合地球環境学研究所らと共同で、実験室で疑似的な水田環境を再現し、水田における環境に配慮する農業の方法である「冬水たんぼ」が水質保全に貢献することを解明しました。
水を巡る環境の保全には、周辺の河川に水を供給する水田も大きな影響をもたらしています。現在、「冬水たんぼ」という農法が全国的に行われています。冬水たんぼとは、冬の間乾いた土地になっている水田に灌漑水を貯めておく農法のことで、湿地を利用する生物に生息地や産卵場所を提供し、その多様性を回復させることが報告されています。一方、冬水田んぼによって水田の状態が変わることで、流域環境の水質などに及ぼす影響はこれまでほとんど調べられてきませんでした。
そうした中、本研究グループは、実験室で疑似的な水田環境を再現し、冬水たんぼが水田から流れ出る栄養分、特に河川や湖沼などの富栄養化の主要因である「リン」の流出を調べました。その結果、冬水たんぼを行うことで水田からのリンの流出を平均して26%低下させる効果があることがわかり、生物多様性保全に限らず水質などの環境保全に関連した農業支援事業の枠組みへの冬水田んぼの有用性が示唆されました。
本研究成果は、2020年4月24日に、国際学術誌「Limnology」のオンライン版に掲載されました。
図:表面水のリン濃度の変化