2025-11-13 国立極地研究所,宇宙航空研究開発機構
国立極地研究所は、昭和基地で約30年間にわたりレーザー観測を継続した結果、地球温暖化により南極の高層大気(高度約80〜100 kmの中間圏付近)が長期的に冷却していることを明らかにした。観測された冷却率は 10年あたり約2〜3 K で、同時期の地表付近の温暖化とは対照的な変化を示す。これは大気中のCO₂濃度増加が、地表を温める一方で高層大気では赤外放射によって熱を失わせ、「冷却」を引き起こすという物理機構と一致する結果である。さらに、気温低下に伴い夜光雲(極域中間圏雲)が増加する兆候も捉えられ、温暖化の影響が高層大気にも及んでいる可能性が示唆された。研究チームは、南極のような長期観測が気候変動の全地球的な構造を理解するうえで不可欠であり、今後も継続データが気候モデル改善に大きく貢献するとしている。

図1:北極海の海氷域面積の年間変動。赤色実線:2025年(1月1日から9月14日まで)、黒色実線:47年間で最も海氷域面積が小さかった2012年、黒色破線:2010年代(2010〜2019年)平均。
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