2024-11-18 京都大学
丸山伸之 農学研究科教授、山田哲也 北海道大学講師、株式会社カネカ食糧生産支援Strategic Unit、今井亮三 農業・食品産業技術総合研究機構エグゼクティブリサーチャーらの研究グループは、iPB-RNP法を利用することで、外来DNAを導入しないダイズのゲノム編集に世界で初めて成功しました。CRISPR/Cas9システムを用いてゲノム編集植物を作成する場合、外来DNAを植物のゲノムに導入し、ゲノム編集酵素であるガイドRNAとCas9タンパク質を植物の細胞内で産生させた後、ゲノム編集が生じた細胞から植物体を再生させる方法が一般的です。しかし、外来DNAの導入や、植物体の再生が非常に困難なダイズ品種もあります。さらに、ゲノム編集個体の実用化を考慮した場合、最終的に導入した外来DNAを取り除く必要があります。そのため、外来DNAの導入と組織培養を伴わないダイズゲノム編集法の確立が強く求められていました。
本研究では、ダイズの複数品種を対象に外来DNAを導入することなく、胚軸の生長点にガイドRNAとCas9タンパク質の複合体を物理的に導入してゲノム編集個体を作出しました。日本のダイズ品種「ユキホマレ」、「エンレイ」や「フクユタカ」を用いて、アレルゲンタンパク質の一つであるGly m Bd 30Kと呼ばれるタンパク質を作らないゲノム編集個体を作出しました。この方法を利用すれば、これまでゲノム編集が難しかった品種についてもゲノム編集を行うことができ、新たな品種改良方法としての利用が期待されます。
本研究成果は、2024年9月23日に、国際学術誌「Plant Physiology」にオンライン掲載されました。
DNAを用いないダイズのゲノム編集方法のイメージ。外来DNAを導入することなくゲノム編集個体が作出できる。
詳しい研究内容について
外来DNAを用いないゲノム編集にダイズで初めて成功~ダイズの迅速かつ的確な品種改良への貢献に期待~
研究者情報
研究者名:丸山 伸之
書誌情報
【DOI】https://doi.org/10.1093/plphys/kiae491
【書誌情報】
Chikako Kuwabara, Ryuji Miki, Nobuyuki Maruyama, Masanori Yasui, Haruyasu Hamada, Yozo Nagira, Yumiko Hirayama, Wataru Ackley, Feng Li, Ryozo Imai, Naoaki Taoka, Tetsuya Yamada (2024). A DNA-free and genotype-independent CRISPR/Cas9 system in soybean. Plant Physiology, kiae491.