2023-11-26 新エネルギー・産業技術総合開発機構
図1 試験航行中の実証試験船「えくすくぅる」
NEDOの委託事業である「CCUS研究開発・実証関連事業」の一環で開発された、二酸化炭素(CO2)を輸送する船舶用カーゴタンクシステムを組み込んだCO2輸送実証試験船「えくすくぅる」(以下、本船)が完成し、本日、命名・引き渡し式が行われました。NEDOから委託された日本ガスライン株式会社(NGL)や一般財団法人エンジニアリング協会(ENAA)などが、本船による実証試験や運航などを担当します。
今後、本船は試験運航後に、液化CO2の輸送実証試験を実施します。実証試験には、CO2の液化・貯蔵・荷役および船舶輸送のプロセスが含まれており、CO2の最適な船舶輸送条件を特定するため、主に本事業で建設した京都府舞鶴市と北海道苫小牧市の陸上基地間を温度や圧力などを変えた、さまざまな条件で繰り返し輸送する計画です。
NEDOは、実証試験を通じて、安全かつ低コストなCO2の船舶による大量輸送技術を確立し、CO2回収・有効利用・貯留(CCUS)技術の社会実装によって、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
1.背景
CCUS※1は、工場や火力発電所などから排出されたCO2が大気中に放出されることを大幅に削減し、脱炭素社会を実現する技術として国内外で高い注目を集めています。しかし、CO2の排出地と貯留地・活用地が離れていることが多く、CO2を安全かつ低コストで大量に輸送する技術の確立がCCUSの普及に向けた課題となっています。
このような背景の下、NEDOは、2030年頃までのCCUSの社会実装に向けて、工場や火力発電所などから排出されるCO2を、貯留地・活用地まで低コストで大量・安全に輸送するため本事業※2を実施し、CO2の液化・貯蔵・荷役および船舶輸送のプロセスを包括した船舶一貫輸送システム確立のための技術開発に取り組んでいます。その一環で開発された船舶用のCO2カーゴタンクシステム※3を組み込んだ本船※4が完成し、本日、命名・引き渡し式が行われました。
2.実証試験の概要
本船による実証試験や運航は、NEDOから委託されたNGLやENAAなどが担当します。本事業で開発したカーゴタンクに、さまざまな温度で液化したCO2を積載するとともに、圧力などを含めタンク内の状態を変更し、主に本事業で建設した京都府舞鶴市と北海道苫小牧市の陸上基地間を繰り返し輸送する計画です。これにより、陸上基地の荷役設備や貯蔵用タンクの機能性も併せて評価し、船舶一貫輸送に最適なCO2の輸送条件を特定することで、大量輸送技術の開発につなげます。
実証試験における液化CO2の低温・低圧状態(-50℃、0.6MPaなど)での船舶輸送試験は世界初の取り組みとなり、低コストでCO2を長距離大量輸送する成果が大きく期待できるものです。
図2 舞鶴基地と苫小牧基地間の輸送イメージ
3.今後の予定
NEDOは、本船による実証試験を通じて、船舶による安全かつ低コストなCO2の大量輸送を実現する技術を確立することでCCUSの社会実装を目指し、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献します。
【注釈】
- ※1 CCUS
- Carbon dioxide Capture, Utilization and Storageの略で、CO2を分離・回収、利用、貯留するものです。
- ※2 本事業
-
- 事業名:CCUS研究開発・実証関連事業/CO2船舶輸送に関する技術開発および実証試験
- 事業期間:2021年度~2026年度
- 事業概要:CCUS研究開発・実証関連事業
- ※3 CO2カーゴタンクシステム
- 中温・中圧(-20℃、2MPaなど)から低温・低圧(-50℃、0.6MPaなど)までの液化CO2を積載可能。また、中温・中圧でのLPGも積載可能な船舶用液化CO2兼LPG輸送用タンクです。
- ※4 本船
- 全長72.0m、全幅12.5m、重量1290t、タンク容量1450㎥の液化CO2を輸送する実証試験船で、三菱重工業株式会社下関造船所で竣工しました。船名の「えくすくぅる」は、EXとCOOLを合わせた造語であるEXCOOLの日本語読みである「エクスクール」に由来するものです。
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 環境部 担当:布川、合﨑 TEL:044-520-5293
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:瀧川、坂本(信)、山脇、柿澤