2022-02-07 京都大学
木舩茉悠 理学研究科修士課程学生(研究当時)、尾方司貴 同修士課程学生、金城克樹 同博士課程学生、真砂全宏 同博士課程学生(現:島根大学助教)、谷口貴紀 同博士研究員(現:東北大学助教)、北川俊作 同助教、石田憲二 同教授の研究グループは、ドイツのマックス・プランク研究所(MPI)ドレスデンの研究グループと共同で、局所的に空間反転対称性が破れた結晶に起因した超伝導相内部で実現する特殊な反強磁性状態を発見しました。
近年、特殊な結晶構造が生み出す超伝導状態や磁気状態に注目が集まっています。CeRh2As2は、結晶構造自身は空間反転対称性をもっていますが、超伝導や磁気的性質に重要なセリウム原子サイトでは空間反転対称性が破れている特殊な結晶構造(縺れ結晶)を有しています。このような結晶では、結晶構造に起因した2種類の超伝導状態が実現することが理論的に指摘されていましたが、ごく最近、MPIドレスデンのグループが理論と比較可能な超伝導状態を発見しました。
本研究グループは、CeRh2As2に対して核四重極共鳴実験を行い、あらたに、超伝導相の内部に反強磁性転移が存在することを発見しました。反強磁性と超伝導が共存する物質ではほとんどの場合、反強磁性転移した後に超伝導になる、「反強磁性超伝導」状態であり、本物質で実現している「超伝導反強磁性」状態はごくまれです。本成果により縺れ結晶の物質では、特異な超伝導に加え、特異な磁気状態を示すことも明らかになりました。今後、この「超伝導反強磁性」と2種類の超伝導がどのように関係しているかを研究していく予定です。
本研究成果は、2022年2月3日に、国際学術誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載されました。
図:超伝導状態を背景に反強磁性が現れる「超伝導反強磁性」状態のイメージ図
研究者情報
研究者名:北川俊作
研究者名:石田憲二