アルマ望遠鏡、若い星のまわりに生まれたばかりの惑星の兆候を発見

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2018/06/15 国立天文台
ふたつの国際研究チームが、アルマ望遠鏡を使って若い星HD 163296を観測し、この星のまわりに3個の誕生直後の惑星が存在する確かな証拠を発見しました。惑星そのものを見るのではなく、若い星を取り巻くガスの円盤が惑星の重力によって乱されているようすを調べるという方法で、生まれたばかりの惑星の存在が示唆されたのです。アルマ望遠鏡による観測でこれほど確かな太陽系外惑星の証拠が得られたのは、これが初めてのことです。

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アルマ望遠鏡が観測した若い星HD 163296を取り巻くガスの円盤の一部。ガスは星のまわりをまわっているため、ガスが放つ電波はドップラー効果を受けます。このため、異なる速度で動くガスからの電波が、波長が少しずつ異なる電波となって届きます。この画像は、ドップラー効果を利用してある特定の速度で動くガスの分布だけをあらわしたものです。画像中央やや左側に、ガスの分布に「く」の字状の明らかな折れ曲がりがあり、惑星が確かにこの近くに存在しているという証拠になります。
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Credit: ESO, ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); Pinte et al.

アルマ望遠鏡による若い星の観測では、それ以前の観測結果を大きく塗り替える成果が数多く挙げられてきました。若い星のまわりのガスや塵の円盤が、詳細に写し出せるようになったのです。見えてきた円盤には何本もの隙間が入っていることも多く、その隙間の中に惑星が存在しているのではないか、という解釈もなされてきました [1] 。しかし、惑星以外でもこうした隙間ができるという説もいくつか唱えられてきました。今回、若い星を取り巻く円盤のガスの動きを詳細に調べることによって、円盤に潜む惑星の確かな証拠が得られたのです。

「原始惑星系円盤のガスの動きを測定することで、そこに惑星があるということをより確実に言えるようになりました。この方法は、惑星形成を理解するための新しい道筋を示してくれているのです。」と、国際研究チームの代表を務めるクリストフ・ピンテ氏(オーストラリア・モナシュ大学、フランス・グルノーブル惑星天体物理学研究所)はコメントしています [2]

もう一つの研究チームを率いるリチャード・ティーグ氏(ミシガン大学)は、「私たちが注目したのは、星を取り巻く円盤のなかに局所的に現れる小さなガスの動きです。アルマ望遠鏡の高い解像度のおかげでこれを見つけることができ、観測史上最も若い惑星の発見に結びつきました。」と語っています。

今回観測された星HD 163296は、いて座の方向330光年の場所にあります。この星は太陽の約2倍の質量をもちますが、年齢は太陽の1/1000ほど、およそ400万歳と見積もられています。

アルマ望遠鏡が撮影した若い星HD163296を取り巻く円盤での塵の分布

アルマ望遠鏡が撮影した、HD 163296のまわりの円盤。この画像では、塵の分布をあらわしています。
Credit: ESO, ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); A. Isella; B. Saxton (NRAO/AUI/NSF)

今回の研究成果は、若い星のまわりの円盤に含まれる一酸化炭素分子が放つ電波の観測によって得られたものです。一酸化炭素分子は、特定の波長で電波を出します。もし一酸化炭素が動いていると、ドップラー効果のため、その波長がわずかに変化します。この波長の変化をとらえることで、若い星のまわりでガスが動いているようすを調べることができるのです。もし円盤の中に惑星があるとしたら、惑星の重力で周囲のガスの動きが乱されるはずです [3] 。これが、惑星発見の決め手になります。

ティーグ氏らの研究では、中心星から120億キロメートルおよび210億キロメートルのところに、またピンテ氏らの研究では、中心星から390億キロメートルのところにそれぞれ惑星があることが示唆されています。これは、太陽と地球の距離のそれぞれ80、140、260倍の位置に相当します。太陽系でもっとも外側の惑星である海王星の軌道の大きさは地球軌道の30倍ですから、HD 163296の惑星は星からとても遠いところを回っていることがわかります。これらの惑星の質量は、木星程度から木星の2倍程度と見積もられています。

円盤内のガスの動きから惑星を見つけるという今回の新しい方法では、惑星の質量をより正確に求めることができます。また、惑星が実際にはないのにあると誤認してしまう可能性も低い方法です。ミシガン大学のテッド・バージン氏は、「この方法で、アルマ望遠鏡は太陽系外惑星検出の大舞台に立つことができました」と語っています。

今回の発見に関わった両チームとも、この手法をさらに洗練させ、他の若い星にも適用したいと考えています。惑星が形作られていく間にどんな成分のガスが惑星に届けられるのか、そんな謎にも答えられるようになるかもしれません。

論文・研究チーム

この研究成果は、以下の2つの論文として天文学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に掲載されました。
Pinte et al. “Kinematic evidence for an embedded protoplanet in a circumstellar disk”
Teague et al. “A Kinematic Detection of Two Unseen Jupiter Mass Embedded Protoplanets”,

それぞれの研究チームのメンバーは、以下の通りです。
C. Pinte (Monash University, Clayton, Victoria, Australia; Univ. Grenoble Alpes, CNRS, IPAG, Grenoble, France), D. J. Price (Monash University, Clayton, Victoria, Australia), F. Ménard (Univ. Grenoble Alpes, CNRS, IPAG, Grenoble, France), G. Duchêne (University of California, Berkeley California, USA; Univ. Grenoble Alpes, CNRS, IPAG, Grenoble, France), W.R.F. Dent (Joint ALMA Observatory, Santiago, Chile), T. Hill (Joint ALMA Observatory, Santiago, Chile), I. de Gregorio-Monsalvo (Joint ALMA Observatory, Santiago, Chile), A. Hales (Joint ALMA Observatory, Santiago, Chile; National Radio Astronomy Observatory, Charlottesville, Virginia, USA) and D. Mentiplay (Monash University, Clayton, Victoria, Australia).

Richard D. Teague (University of Michigan, Ann Arbor, Michigan, USA), Jaehan Bae (Department of Terrestrial Magnetism, Carnegie Institution for Science, Washington, DC, USA), Edwin A. Bergin (University of Michigan, Ann Arbor, Michigan, USA), Tilman Birnstiel (University Observatory, Ludwig-Maximilians-Universität München, Munich, Germany) and Daniel Foreman- Mackey (Center for Computational Astrophysics, Flatiron Institute, New York, USA).

[1]
過去20年の間に太陽系外惑星はすでに何千個も発見されていますが、原始惑星の発見についてはまだまだ研究途上で、これまで疑いのない証拠というものは見つかっていませんでした。太陽系外惑星の発見には、惑星の運動による主星の動きや明るさの変化をとらえる方法がありますが、これらは成長しきった「大人の」惑星系に適用できるもので、成長途上の原始惑星の発見には使えません。

[2]
この方法は、チリ大学のセバスティアン・ペレズ氏らが2015年の論文 “Planet formation signposts: observability of circumplanetary disks via gas kinematics”で論じた内容に基づいています。

[3]
星のまわりをまわるガスの動きは、ケプラー運動と呼ばれるとてもシンプルなものです。このケプラー運動とは異なる動きをするガスがあれば、それは何か他の要因、例えば見えない惑星の重力の影響を受けている可能性があります。

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