2024-03-25 京都大学
掛谷秀昭 薬学研究科教授、金子賢介 同特定研究員 (研究当時)、三枝毬花 同修士課程学生(研究当時)らの研究グループは、植物病害そうか病原因菌Streptomyces scabieiに対して強い抗菌作用を示す微生物代謝産物ツメセナミドC (Tum C)を見出し、そうか病に対する農薬シーズとしての有望性を明らかにしました。
そうか病は、主として放線菌の一種Streptomyces scabieiによって発症する植物病害です。ジャガイモ、大根、ニンジン、カブなど主要な根菜類の根塊で発症し、病斑によって作物の商品価値を著しく低下させる深刻な植物病害ですが、選択性や安全性に優れた抗菌剤など有効な防除策が少ないといった問題を抱えています。
本研究では、同研究グループによって単離・構造決定、および全合成が達成された天然物Tum Cが、そうか病原因菌S. scabieiに対して顕著な抗菌活性を示すことを明らかにしました。また、Tum C耐性株を作成し、各種表現型解析と次世代シーケンサー解析を行い、その作用因子の一端を明らかにするとともに、Tum C耐性化が、そうか病の病原性を低下させるというユニークな特性を明らかにしました。これにより、そうか病原因菌をターゲットとした新規農薬開発に繋がることが期待されます。
本研究成果は、2024年3月25日に、国際学術誌「The Journal of Antibiotics」にオンライン掲載されました。
Tum Cが、そうか病原因菌S. scabieiに対して顕著な抗菌活性を示すことを明らかにした。また、Tum C耐性株を作成し、Tum Cが細胞壁成分(壁テイコ酸:WTA)をターゲットとすること、Tum C耐性化がS. scabieiの病原性を低下させるというユニークな特性を明らかにした。
研究者のコメント
「この度、当研究室で単離・構造決定、および全合成を達成した微生物代謝産物Tum Cに関して、そうか病原菌S. scabieiに対する抗菌活性を見出し、各種表現型解析と次世代シーケンサー解析を種々検討した結果、細胞壁成分である壁テイコ酸 (WTA) を作用点とする可能性と、Tum C耐性化がそうか病の病原性を低下させるという想定外の非常に興味深い現象を明らかにしました。本研究成果が、植物病害そうか病の原因菌をターゲットとした革新的な農薬の開発に繋がることを期待しています。」
詳しい研究内容について
植物病害そうか病原因菌Streptomyces scabieiに対する抗菌物質の発見―そうか病をターゲットとした新規農薬の開発に期待―
研究者情報
研究者名:掛谷 秀昭
研究者名:金子 賢介