2024-03-21 京都大学
BTBT-NHCOC3H7の結晶構造。赤色背景:アミド基間の極性水素結合鎖による強誘電体。青色背景:BTBT間の二次元配列による有機半導体。
【発表のポイント】
- 分子の設計指針が異なる有機半導体と有機強誘電体、それぞれに必要とされる集合体構造を両立して実現可能な有機分子を開発しました。
- 単一有機分子で、半導体特性と強誘電性の両立をデバイス構造で観測しました。
- 強誘電体の外部電場応答性を利用し、有機半導体デバイスのON/OFFスイッチングを実現しました。次世代高密度メモリへの展開が期待できます。
【概要】
有機材料は、その分子集合様式や分子間に働く様々な相互作用を化学的に制御することによって多彩な機能を引き出すことができます。現在の電子デバイスのほとんどはシリコンに代表される無機材料で作られていますが、有機材料に置き換えることによって、柔らかくて曲げに強い、真空装置がいらない印刷技術で、短時間で製造できるなど様々な利点があります。
研究グループは、高いホール移動度を有する半導体特性を有する有機材料のベンゾチアノベンゾチオフェン(BTBT)骨格に極性水素結合ネットワークを導入して強誘電性を発現させ、半導体特性との両立に成功しました。半導体特性と強誘電体特性は、外部電場に対して電流を流す性質と電荷を保持する性質であり互いに相反する物性であることから、その分子設計の指針は異なります。今回これらを両立させることにより、外部電場に応答可能な分子集合体の創製が可能となり、有機半導体特性のON/OFF制御の実現に成功しました。本成果は、次世代有機エレクトロニクスの機能制御のための技術開発に新たな可能性を拓くと期待されます。
本研究の成果は米国現地時間の2024年3月14日、学術誌Journal of the American Chemical Societyにてオンライン掲載されました。
なお本成果は、東北大学多元物質科学研究所 大学院生(大学院工学研究科)の三部宏平氏と芥川智行教授、信州大学学術研究院理学系の武田貴志准教授、新潟大学教育研究院自然科学系の星野哲久特任准教授、京都大学大学院工学研究科分子工学専攻の関修平教授と松田若菜博士、東北大学大学院工学研究科の松本祐司教授と丸山伸伍准教授および山本俊介助教、同 大学院生(研究当時)の島田一輝氏と辻田香奈瑛氏らの共同研究によるものです。
研究詳細
強誘電性と半導体特性が両立する新しい有機分子の開発に成功─単一分子で作る有機メモリ素子の実現に期待─
研究者情報
関 修平
書誌情報
タイトル
Carrier Transport Switching of Ferroelectric BTBT Derivative
著者
Kohei Sambe, Takashi Takeda*, Norihisa Hoshino, Wakana Matsuda, Kazuki Shimada, Kanae Tsujita, Shingo Maruyama, Shunsuke Yamamoto, Shu Seki, Yuji Matsumoto and Tomoyuki Akutagawa*
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 教授 芥川智行、信州大学学術研究院理学系 准教授 武田貴志
掲載誌
Journal of the American Chemical Society