高速電波バーストの謎に迫るマグネターの双子グリッチ~銀河系内マグネターSGR 1935+2154のFRB前後にグリッチを発見~

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2024-02-15 京都大学

成田拓仁 理学研究科博士課程学生、榎戸輝揚 同准教授(兼:理化学研究所チームリーダー)、Chin-Ping Hu 台湾国立彰化師範大学准教授らの研究グループは、銀河系内の強磁場の天体(マグネター)SGR 1935+2154をX線で高頻度に観測し、2022年10月14日に発生した高速電波バースト(Fast Radio Burst, FRB)の前後に、星の自転が急速に速くなるグリッチが2回起きたことを突き止めました。宇宙遠方で生じる高速電波バーストの発生機構を解明する上で重要な一歩となる発見です。

宇宙の遠方から到来する謎の高速電波バーストは、2007年に発見が報告されてからいくつもの事象が検出されてきましたが、その放射源である天体や、その発生機構は現在まで明らかになっていません。2020年に銀河系内のマグネターから高速電波バーストがX線のバーストと同時に検出されたことで、マグネターは高速電波バーストを放射する天体の正体として、有力候補の一つになっていますが、その発生機構は未解明のままです。本研究グループは、2022年10月10日にこのマグネターがX線放射の活動性を増した時期に、国際宇宙ステーションのX線望遠鏡NICERとX線天文衛星NuSTARでの高頻度な追跡観測を行いました。その結果、X線バースト放射を多数検出したことに加え、モニタリング観測の期間中の同月14日に高速電波バーストが発生し、それを時間的に挟むように2度にわたって天体に回転が急激に加わる双子のグリッチを発見しました。グリッチ間では自転が急激に減速していました。変動する宇宙をスクープした時間軸天文学の成果と言えます。

本研究成果は、2024年2月15日に、国際学術誌「Nature」に掲載されました。

研究者のコメント

「高頻度な観測で大規模データが生み出され、その解析には先進的なアルゴリズム、迅速なデータ転送、十分な計算能力、そして緊密な国際協力が必須です。本研究で、マグネターや高速電波バーストの解明につながる有益な情報が得られ、将来の望遠鏡や観測戦略の策定のヒントにもなりました。」(Chin-Ping Hu)

「マグネターは重い星の爆発の後で形成される中性子星の一種と考えられていますが、その形成と爆発の関係は明らかになっていません。将来は爆発した星の残骸とマグネターを観測することで、その起源に迫っていきます。」(成田拓仁)

「今回の成果は、マグネターの活動期にかつてない高頻度なモニタリング観測を迅速に実施できたことが鍵になりました。激変する宇宙を観測する時間軸天文学の分野では、こういった高頻度観測は大切で、将来の宇宙望遠鏡や月面天文台で実現していきたいです。」(榎戸輝揚)

詳しい研究内容について

高速電波バーストの謎に迫るマグネターの双子グリッチ―銀河系内マグネター SGR 1935+2154 の FRB 前後にグリッチを発見―

研究者情報

研究者名:榎戸 輝揚

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41586-023-07012-5

【書誌情報】
Chin-Ping Hu, Takuto Narita, Teruaki Enoto, George Younes, Zorawar Wadiasingh, Matthew G. Baring, Wynn C. G. Ho, Sebastien Guillot, Paul S. Ray, Tolga Güver, Kaustubh Rajwade, Zaven Arzoumanian, Chryssa Kouveliotou, Alice K. Harding, Keith C. Gendreau (2024). Rapid spin changes around a magnetar fast radio burst. Nature, 626(7999), 500-504.

1701物理及び化学
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