2024-01-22 京都大学
材料化学専攻の高根倫史 博士後期課程学生、田中勝久 同教授、物質・材料研究機構 大島孝仁 主任研究員、原田尚之 同独立研究者、立命館大学総合科学技術研究機構 金子健太郎 教授・RARAフェロー/Patentix株式会社・取締役CTOらの研究チームは、次世代パワーエレクトロニクス材料として注目されるルチル型酸化物半導体の1つであるルチル型(r-)GexSn1−xO2混晶の格子整合エピタキシーによる高品質化、および、その高品質なr-GexSn1−xO2(x=~0.53)薄膜を用いたショットキーバリアダイオード(SBD)の動作実証に成功しました。本成果は、極めて低い欠陥密度が要求される高耐圧パワーデバイス材料として、ルチル型酸化物半導体が有用であることを示唆するものです。
r-GeO2とr-SnO2の混晶であるr-GexSn1−xO2については、高範囲でのバンドギャップ変調、良好な電気伝導特性が報告されており、ヘテロ構造デバイスを含めた多様な応用が期待されます。本研究では、xを0.53付近に調整してr-GexSn1−xO2薄膜をr-TiO2基板上に格子整合(格子整合エピタキシー)させることで、薄膜内の貫通転位密度を透過型電子顕微鏡の観察限界以下まで低減できることを明らかにしました。さらにr-TiO2基板上に格子整合したr-GexSn1−xO2薄膜を用いて作製したSBDは±5 Vの電圧印加時に約105程度の整流比を示し、今後のデバイス応用に有望であることが示唆されました。今後、パワーデバイスへの応用を目指した、ルチル型酸化物半導体に関する研究・開発のさらなる発展が期待されます。
本研究成果は、2024年1月3日に応用物理学会の国際学術誌「Applied Physics Express」にオンライン掲載されました。
研究詳細
TiO₂に格子整合した高品質ルチル型GexSn1−xO2デバイスの動作実証 ―高耐圧パワーデバイスへの応用―
研究者情報
田中 勝久
書誌情報
タイトル
Rutile-type GexSn1−xO2 alloy layers lattice-matched to TiO2 substrates for device applications(デバイス応用に向けたTiO2基板に格子整合したルチル型GexSn1−xO2混晶薄膜)
著者
Hitoshi Takane, Takayoshi Oshima, Takayuki Harada, Kentaro Kaneko, and Katsuhisa Tanaka
掲載誌
Applied Physics Express