令和6年能登半島地震の評価

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2024-01-15 地震調査研究推進本部地震調査委員会

令和6年能登半島地震の評価

○ 1月1日 16 時 10 分に石川県能登地方の深さ約 15km でマグニチュード(M)7.6 の地震が発生した。この地震により石川県羽咋郡(はくいぐん)志賀町(しかまち)香能(かのう)で最大震度7を観測したほか、能登地方の広い範囲で震度6弱以上の揺れを観測するなど、被害を伴った。また、石川県では長周期地震動階級4を観測した。この地震の発震機構は北西-南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。

〇 今回の地震により、輪島港(港湾局)観測点で 1.2m 以上、金沢(港湾局)観測点で 0.9m(いずれも速報値)など、北海道から九州にかけての日本海沿岸を中心に津波を観測している。そのほか、空中写真や現地観測から、能登半島等の広い地域で津波による浸水が認められた。それらの地域では、4m以上の津波遡上高を観測している地域がある。

○ GNSS観測によると、今回の地震に伴って、輪島2観測点(国土地理院)で南西方向に 2.0m 程度の変動、1.3m 程度の隆起が見られるなど、能登半島を中心に広い範囲で地殻変動が観測された。陸域観測技術衛星2号「だいち2号」が観測した合成開口レーダー画像の解析によると、輪島市西部で最大4m程度の隆起、最大2m程度の西向きの変動、珠洲(すず)市北部で最大2m程度の隆起、最大3m程度の西向きの変動が検出された。現地調査により、能登半島の北西岸で、今回の地震に伴う新たな海成段丘が認められた。また、空中写真及び合成開口レーダー画像の解析や現地調査から、能登半島北岸の広い範囲で隆起により陸化した地域があることが分かった。

〇 2023 年 12 月までの地震活動の範囲は能登半島北東部の概ね 30 ㎞四方の範囲であったが、1月1日の M7.6 の地震の直後からの地震活動は北東-南西に延びる 150 ㎞程度の範囲に広がっている。地震活動域は主として南東に傾斜した面状に、北東側では北西に傾斜した面状に、震源が分布している。また、地震活動域の西端付近では1日に M6.1 の地震が、東端付近では9日に M6.1 の地震が発生するなど、現在も概ね同様の範囲で地震が発生している。M7.6 の地震の発震機構、地震活動の分布、GNSS観測、地震波及び津波波形の解析から推定される震源断層は、北東-南西に延びる 150 ㎞程度の主として南東傾斜の逆断層であり、断層すべりは震源から北東と南西の両側に進行したと考えられる。

〇 津波データ解析から、M7.6 の地震に伴う地震時の隆起域の東端は震源域北東(能登半島から北東に約 40km)に推定されている。
○ 1月1日に発生した M7.6 の地震に伴って、志賀町香能(K-NET 富来(とぎ)観測点)で 2,828gal(三成分合成)など、大きな加速度を観測した。

〇 現在も活発な地震活動が継続している。1日 16 時から 15 日 08 時までの間に、最大震度1以上を観測した地震が 1398 回(震度7:1回、震度6弱:1回、震度5強:7回、震度5弱:7回)発生した。これまでの地震活動は、今回の M7.6 の地震と同様に津波を伴った日本海沿岸の大地震である昭和 58 年(1983 年)日本海中部地震(M7.7)や平成5年(1993 年)北海道南西沖地震(M7.8)の後の地震活動と同様に活発である。

〇 1月1日に発生した M7.6 の地震から2週間経過したものの、M7.6 の地震の発生前と比較すると依然として地震活動は活発な状態である。今後2~3週間程度、最大震度5強程度以上の地震に注意が必要である。最大震度6弱以上の地震についても、M7.6 の地震の発生直後に比べると低くなってきているものの、依然として、発生する可能性がある。なお、日本海沿岸の大地震である昭和 39 年(1964 年)の新潟地震(M7.5)、昭和 58 年(1983 年)日本海中部地震(M7.7)、平成5年(1993 年)北海道南西沖地震(M7.8)の際には、最大の地震の約 1 か月後に大きな規模の地震が発生している。昨年 12 月までと比べて地震活動の範囲は広がっており、これまでより広範囲で強い揺れを観測している。また、海底で規模の大きな地震が発生した場合、津波に注意する必要がある。

〇 今回地震が発生した石川県能登地方の地殻内では 2018 年頃から地震回数が増加傾向にあり、2020 年 12 月から地震活動が活発になっており、2021 年7月頃からさらに活発になっていた。一連の地震活動において、2020 年 12 月1日から 2023 年 12 月 31 日までに震度1以上を観測する地震が 506 回、このうち震度3以上を観測する地震が 67 回発生した。2023 年 12 月に震度1以上を観測した地震は8回であった。2023 年5月5日に M6.5 の地震を観測した。

〇 GNSS観測の結果によると、2020 年 12 月頃から M6.5 の地震が発生するまでに、石川県珠洲市で水平方向に1cm を超える移動及び上下方向に4cm 程度の隆起が見られるなど、地殻変動が観測されていた。また、GNSS観測や陸域観測技術衛星2号「だいち2号」が観測した合成開口レーダー画像の解析結果によると、 M6.5 の地震に伴って、震央周辺で最大 20 ㎝程度の地殻変動が見られた。M6.5 の地震後に複数の観測点で見られていた地震前の傾向とは異なる変動が時間の経過とともに鈍化し、2023 年末の時点では M6.5 の地震が発生する前の傾向にほぼ戻っていた。

〇 一連の地震活動は、主に能登半島の北東部及び北側の海域を中心に発生していた。1月1日以降の地震活動域は、能登半島の北部を北東-南西方向に縦断し、北東側は能登半島北東海域、南西側は平成 19 年(2007 年)能登半島地震の活動域付近まで達している。また、能登半島北東部では、これまで起きていた地震活動より浅いところで活動が見られている。

〇 GNSS観測の結果によると、1月1日の M7.6 の地震の後、能登半島及びその周辺で余効変動と考えられる地殻変動が観測されている。

○ 1月6日 23 時 20 分に能登半島沖の深さ約5km で M4.3 の地震が発生し、志賀町香能で最大震度6弱を観測した。志賀町香能の観測点では周辺の観測点に比べて大きな震度が観測されたが、震源が観測点に非常に近かったため、震度が大きくなった可能性がある。

〇 能登半島西方沖から北方沖、北東沖にかけては、主として北東-南西方向に延びる複数の南東傾斜の逆断層が活断層として確認されている。この活断層が今回の地震に関連した可能性が高い。

〇 また、更に北東の佐渡島西方沖にかけては、主として北西傾斜の逆断層が活断層として確認されており、この活断層の一部が今回の地震に関連した可能性も考えられる。

〇 これまでの地震活動及び地殻変動の状況を踏まえると、2020 年 12 月以降の一連の地震活動は当分続くと考えられる。特に今回の活動域及びその周辺では、今後強い揺れや津波を伴う地震発生の可能性がある。

*:「令和6年能登半島地震」(気象庁が定めた名称)は、1月1日以降の一連の地震及び令和2年 12 月以降の能登地方での一連の地震活動を指す。注:GNSSとは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般をしめす呼称である。

詳しい資料は≫

1702地球物理及び地球化学
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