2024-01-12 京都大学
竹熊晴香 化学研究所助教、佐藤良太 同特定助教、寺西利治 同教授の研究グループは、治田充貴 同准教授、倉田博基 同教授(研究当時)、飯田健二 北海道大学准教授、川脇徳久 東京理科大学講師、信定克幸 分子科学研究所准教授(研究当時)とともに、C1構造をもつPtIn2ナノ粒子の液相合成に成功し、可視領域のプラズモン特性を明らかにしました。
M. FaradayがAuコロイドの着色原理を解明してから160余年、本質的に可視域で局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を示す無機材料として「貨幣金属(Au、Ag、Cu)を含んだ金属ナノ粒子」が主に研究されてきました。今回、研究グループは、貨幣金属を含まないナノ粒子として、C1型(CaF2型)の結晶構造をもつコロイド状PtIn2ナノ粒子を液相法により合成し、可視領域にLSPRを示すことを明らかにしました。C1-PtIn2ナノ粒子のユニークな可視プラズモン特性の起源を調べるため、スーパーコンピュータを用いたシミュレーションを行いました。C1-PtIn2と面心立方格子(fcc)構造のAuナノ粒子の電子構造と光励起電子ダイナミクスの違いを調べたところ、前者は後者に比べてバンド間遷移が減少しPt原子の束縛d電子によるスクリーニング効果が強くなっていることがわかりました。
これらの結果は、金属間化合物ナノ粒子の結晶構造と組成を調整することにより、そのプラズモン特性を制御することが可能であることを強く示唆するものです。本研究から得られた知見をもとに、従来の貨幣金属ナノ粒子の代替材料となるような、金属間化合物ナノ粒子による新しいプラズモニック材料の開発が期待されます。
本研究成果は、2024年1月9日に、国際学術誌「Advanced Science」にオンライン掲載されました。
C1-PtIn2ナノ粒子の鮮やかな紫色の呈色
研究者のコメント
「金を使わずに金を、という錬金術のような研究ですが、白金原子とインジウム原子が規則正しく並んだ金属間化合物ナノ粒子であれば、金ナノ粒子のようなプラズモン特性を示すことが明らかになりました。現段階では金や銀に特性で劣っている部分もありますが、様々な結晶構造や電子構造を取りうる金属間化合物であれば、その中には既存の材料を超越するものが眠っているかもしれません。まさに夜明けを迎えた金属間化合物ナノ粒子のプラズモン特性探索の中で、今後も一層励みたいと思います。」(竹熊晴香)
詳しい研究内容について
コロイド状C1-PtIn2ナノ粒子による可視プラズモン特性の発現―新規可視プラズモン材料としての金属間化合物ナノ粒子の設計指針―
研究者情報
研究者名:竹熊 晴香
研究者名:佐藤 良太
研究者名:寺西 利治
研究者名:治田 充貴
研究者名:倉田 博基