2023-06-30 東京大学
東京大学大学院新領域創成科学研究科の藤本・清水研究室が、柏市、その他関係機関と「柏ITS推進協議会」(※1)の枠組みで実施している、電気自動車への走行中給電技術の実証実験の取り組みが、国土交通省が公募する「道路に関する新たな取り組みの現地実証実験(社会実験)」として採択されました(※2)。
本社会実験では、2023年秋から約1年間にわたり、東京大学柏キャンパスがある柏市柏の葉地区において、日本初の公道上における電気自動車への走行中給電技術の実証および社会的受容性の確認を実施する予定です。
本社会実験により、道路政策ビジョン「2040年、道路の景色が変わる」(※3)にも掲げられた、低炭素道路交通システムの実現による地球温暖化の進行抑制に向けた大きな貢献が果たせるものと考えています。
<採択決定を受けた藤本教授コメント>
海外では走行中給電の実証実験が次々に進められており、日本は技術面で優れても社会実証が遅れている状況でした。本社会実験を皮切りに低炭素社会の実現に向けて世界を主導できるように研究に取り組んでまいります。
<電気自動車への走行中給電の意義>
日本のCO2排出量(10億6,400万トン)のうち、自動車からの排出量は15.1%(1億6,066万トン)にのぼり(※4)、今後欧州においては、自動車に関わるCO2排出量をさらに厳しく制限する規制が予定されています。その動向を踏まえて世界中の自動車メーカーが車両の電動化(EV化)の開発・普及を推進していますが、近い将来にバッテリーの供給不足が懸念されています(下線部分:2023年6月30日修正)。
走行・停車中に路面から給電する走行中給電システムを活用することで、より少ないバッテリー搭載量でEVの航続距離を確保可能になります。これにより、バッテリーの供給不足の懸念を払拭すると共にEVの軽量化が可能となり、バッテリー製造および走行によって排出されるCO2の大幅な削減が可能となります。
<電気自動車への走行中給電技術の概要>
本プロジェクトで実証実験を行う走行中給電は、路面に埋設された送電コイルから車両に搭載された受電コイルに非接触で電力を送るシステム(図1)です。本実証実験で使用する車両は東京大学が開発しました(図2)。送電コイルは、走行中給電が可能な車両が、送電コイルの上を通過、もしくは一時停止していることを検知して送電を行います。受電コイルや受電回路等の走行中給電システムを搭載していない車両が送電コイルの上を通過しても送電は行われません。
なお、本プロジェクトで実証する走行中給電の技術は、東京大学藤本博志教授らの研究グループが提案し、科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業「地球規模課題である低炭素社会の実現」領域の研究テーマとして採択され、現在進行中の研究テーマ「電気自動車への走行中直接給電が拓く未来社会(JPMJMI21E2)」の成果です。
図1 走行中給電システムの概要
図2 実証実験で使用する車両と路面構造
※1 柏ITS推進協議会ホームページ
http://www.kashiwa-its.jp/
※2 国土交通省ホームページ
令和5年度社会実験の実施地域について
「電気自動車への走行中給電による低炭素道路交通システムの実現のための実証実験」
https://www.mlit.go.jp/road/demopro/public_offering/area.html
※3 道路政策ビジョン
国土交通省 社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会
「2040年、道路の景色が変わる」
https://www.mlit.go.jp/road/vision/01.html
※4 出典 国土交通省ホームページ
運輸部門における二酸化炭素排出量(2023年6月30日確認)
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html
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