次世代船舶向け2ストロークエンジン、世界初のアンモニア混焼試験などを開始~船舶産業分野で、温室効果ガスの排出量削減に貢献~

ad

2023-05-16 新エネルギー・産業技術総合開発機構

NEDOは、グリーンイノベーション基金事業「次世代船舶の開発」(以下、本事業)の一環として、低・脱炭素燃料エンジンの開発に取り組んでいます。今般、舶用アンモニア燃料エンジンの開発で試験エンジンが完成し、世界初となる大型低速2ストロークエンジンでのアンモニア燃料の混焼運転を開始しました。また、舶用水素燃料エンジンの開発では水素燃料噴射装置が完成し、作動試験を開始しました。これらの開発は(株)ジャパンエンジンコーポレーションが担当しています。

今後は、これらの試験機器を用いてさらなる技術開発を進め、フルスケール実証用エンジンの設計や製造、検証運転といった社会実装に向けた研究開発を進めます。アンモニア燃料2ストロークエンジンを搭載した船舶は2026年、水素燃料2ストロークエンジンを搭載した船舶は2028年の竣工、商業運航開始を目指します。これにより、2050年カーボンニュートラルへの道筋を示し、船舶産業における温室効果ガスの排出量削減に貢献します。

1.背景

2020年10月、日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする目標を掲げました。また、国際海運全体からの二酸化炭素(CO2)排出量は世界全体の排出量の約2.1%(2018年時点)を占めており、世界経済の成長を背景とした海上輸送需要の増加で、何も対策を講じなければ海上輸送のCO2排出量はさらに増えることが見込まれており、国際海運においても脱炭素の取り組みが重要であることから、2021年10月に「国際海運2050年カーボンニュートラル」を目指すことを発表しています。

海上輸送のカーボンニュートラル実現には、既存燃料の重油から、水素・アンモニアといった燃料への転換が必須であり、それらを燃料とするエンジンをはじめとした舶用製品の開発が必要とされています。

こうした中、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金事業※1「次世代船舶の開発」の一環として、株式会社ジャパンエンジンコーポレーションは「アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の開発」※2と「舶用水素エンジン及びMHFSの開発」※3で、大型船の主機に用いられる大型低速2ストロークエンジンの開発に取り組んでいます。

2.今回の成果
(1)世界初、アンモニア燃料試験エンジンを用いたアンモニア燃料混焼運転の開始

アンモニアは、燃焼時にCO2を排出しないゼロエミッション燃料である一方、難燃性や腐食性、毒性といった燃焼上、保存・利用上の課題があります。特にエンジンの燃料として使用するためには、燃焼の安定性が課題でした。そこで、(株)ジャパンエンジンコーポレーションの固有技術である層状噴射技術※4を適用することで、難燃性のアンモニアを安定的に燃焼させることを狙います。今回、実際にアンモニアを燃焼させる試験エンジンを完成させ、世界で初めて大型低速2ストロークエンジンでのアンモニア燃料の混焼運転を開始しました。

今後約1年間にわたってさまざまな条件下でのアンモニア燃料運転を実施します。このエンジンに組み合わせる燃料供給設備とともに運用し、そこで得られた知見・経験をエンジン開発や船舶用のアンモニア供給設備の開発へ展開します。また、エンジンの試験と並行して、フルスケール実証用アンモニア燃料エンジンの開発・設計・製造を進め、2025年に約半年間の実機検証運転を経た後、同年9月の完成を予定しています。そして2026年に、アンモニア燃料2ストロークエンジンを搭載した船舶の竣工、商業運航開始を目指します。

次世代船舶向け2ストロークエンジン、世界初のアンモニア混焼試験などを開始~船舶産業分野で、温室効果ガスの排出量削減に貢献~

図1 今回混焼運転を開始したアンモニア燃料試験エンジン

(2)水素燃料噴射試験装置の作動試験の開始

水素もアンモニアと同じく、燃焼時にCO2を排出しないゼロエミッション燃料である一方、非常に燃えやすい(最小着火エネルギーが小さく、燃焼速度が大きい)という燃焼上の課題があります。また、沸点が極めて低いこと、金属を脆化(ぜいか)させることといった保存・利用上の課題もあり、重油をはじめとした従来の舶用燃料とは異なる燃料供給設備が必要です。(株)ジャパンエンジンコーポレーションではこれまで従来の舶用燃料と異なる水素の挙動についてシミュレーション技術などを活用して把握、解析を進めてきましたが、今回、実際の水素燃料エンジンに近い環境での挙動を確認するための燃料噴射装置を完成させ、作動試験を開始しました。

今後1年以上にわたって水素燃料噴射試験装置の試験を実施し、水素高圧噴射装置の構造や仕様などの設計細部の検証を進め、基礎データを蓄積します。その後、フルスケール実証用水素燃料エンジンの開発・設計・製造を進め、2026年から約1年間の実機検証運転を経た後、2027年3月の完成を予定しています。そして2028年に、水素燃料2ストロークエンジンを搭載した船舶の竣工、商業運航開始を目指します。

水素燃料噴射試験装置の写真

図2 今回作動試験を開始した水素燃料噴射試験装置
(左:水素燃料噴射試験装置全景、右:水素燃料噴射装置)

3.今後の予定

本事業では、このほかにも4ストロークの水素・アンモニア燃料エンジンの開発、LNG燃料船のメタンスリップ対策のための技術開発などを進めており、国内造船業・舶用工業の国際競争力を強化するとともに、海運業も一体となって社会実装を目指します。これらの研究開発により、2050年カーボンニュートラルへの道筋を示し、船舶産業における温室効果ガスの排出量削減に貢献します。

【注釈】
※1 グリーンイノベーション基金事業
日本の掲げる「2050年カーボンニュートラル」に向けて、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業などに対して研究開発・実証から社会実装まで10年間継続して支援する事業です。
特設サイト:グリーンイノベーション基金事業
※2 アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の開発
※3 舶用水素エンジン及びMHFSの開発

MHFSは「Marine Hydrogen Fuel System」の略で、舶用水素燃料タンクおよび燃料供給システムのことです。

※4 層状噴射技術
ある燃料の無噴射期間中に燃料噴射管および燃料弁の燃料油ライン内に別の燃料を注入することで、同じ燃料弁から異なる種類の燃料を層状に噴射する技術です。
4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 新領域・ムーンショット部 担当:清田、宮嶋、吉田

(グリーンイノベーション基金事業全体についての問い合わせ先)
NEDO グリーンイノベーション基金事業統括室 担当:井上、堀、茂手木

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:橋本、坂本、黒川、鈴木、根本

0104動力エネルギー
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました