2023-03-29 京都大学
超分子–高分子複合ヒドロゲル形成の模式図と四種類の網目構造の共焦点顕微鏡画像
合成・生物化学専攻の 浜地格 教授・窪田亮 同講師・中村圭佑 同博士研究員らの研究グループは、超分子ゲルと高分子ゲルを混ぜ合わせた複合ヒドロゲルのネットワーク構造が少なくとも四つに分類できることを発見し、網目構造を制御する因子を特定しました。
ヒドロゲルは、繊維状分子の三次元網目からなる水を含んだゼリー状材料であり、薬物徐放や組織工学等の先端医療への応用が期待されています。ゲル物性を制御する方法として、複数の異なる網目を組み合わせた複合ヒドロゲルが最近注目されています。しかし、複数種の網目を区別しながら観察することは現在でも困難であり、網目構造の詳細や網目が物性に及ぼす影響はほとんど知られていませんでした。本研究では、共焦点顕微鏡によって異種の網目構造の観察に成功し、µmスケールの網目構造が少なくとも四つに分類できることを発見しました。ゲルの形成過程を動画撮影することで、四種の構造が網目の形成する順番と網目間の相互作用によって決定することを見出しました。さらにある複合ヒドロゲルに対して数十µmサイズの傷をつけると、その傷を埋めるように網目構造が回復することを発見し、ゲルの三次元パターン化を達成しました。本研究の知見は、複合ゲルの網目構造を様々に作り分けることでゲル物性を制御する新戦略につながると期待されます。
本成果は、2023年3月27日に英国の国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
研究者情報
浜地格
窪田亮
書誌情報
タイトル
“Four distinct network patterns of supramolecular/polymer composite hydrogels controlled by formation kinetics and interfiber interactions”
(形成速度とファイバー間相互作用によって制御される超分子/高分子複合ヒドロゲルの四つのネットワークパターンの発見と分類)
著者
中村圭佑、窪田亮、青山拓磨、浦山健治、浜地格
掲載誌
Nature Communications