2023-03-27 京都大学
暗号資産は、デジタル経済の時代に欠かせない存在となりつつあります。総合生存学館では、理化学研究所などとの共同研究において、ネットワーク科学、位相幾何学、機械学習、量子論理などを駆使することによって、マネーロンダリングや詐欺などの異常事象の検出、価格バーストの予知を行う理論的研究に取り組んでいます。
池田裕一 総合生存学館教授、アビジット・チャクラボルティ 同特定助教、初田哲男 理化学研究所プログラムディレクター(東京大学名誉教授)の研究グループは、暗号資産の取引ネットワークに対応する相関テンソルのスペクトルを解析する新規手法を開発して、相関テンソルの最大特異値が暗号資産価格の価格と有意な負の相関を示すことを発見しました。この発見を用いて、価格バーストの早期指標を提供できる見通しを得ました。
現在、今回の論文で解析した期間以外で開発手法が有効であることの確認を進めています。今後は、安心して使える暗号資産とデジタル経済の実現にむけた京都発の技術として、国内外の企業と力を合わせて本開発手法を実用化できるように取り組んでいきます。
本研究成果は、2023年3月22日に、国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「ブロックチェーン技術は、(1)難民のための医療サービス用デジタルID、(2)再生可能エネルギー・水素などの脱炭素エネルギーの取引、(3)低手数料で差別のない国際送金、(4)サプライチェーンや商品市場などの管理、などのグローバル問題の解決策を提供するための基盤技術として有望です。そのためには、暗号資産の価格が安定していること、取引速度が速いことなどが必要です。また、マネーロンダリングや詐欺などの異常事象を事前に検知できなければなりません。このような研究を通して、ブロックチェーンを使ってデジタル田園都市構想を世界展開する仲間を求めます。ご参画いただける企業の方からのご連絡をお待ちしています。」(池田裕一)
研究者情報
研究者名:池田 裕一
研究者名:CHAKRABORTY Abhijit