2022-12-27 京都大学
物質の熱の伝わりやすさである熱伝導率を制御することは、放熱や断熱といった生活に身近な応用に加えて、電子デバイスの高性能化や自動車等の省エネルギー化、また発電効率や各種の材料特性の向上など、熱に関する様々な課題解決や熱エネルギーの有効利用に欠かせないサーマルマネージメント技術の一つとして注目されています。
物質エネルギー化学専攻の 高津浩講師、陰山洋教授、東北大学の山田高広教授、山根久典教授、菅野雅博博士課程学生(研究当時)、大阪大学の吉矢真人教授、産業技術総合研究所の池田拓史上級主任研究員、永井秀明主任研究員らの研究グループは、金属間化合物の結晶構造内のトンネル空間に配置した原子が、大きな振幅で振動しながら互いに強く相関することにより、物質の熱伝導率が著しく低減する現象を、実験および理論計算より明らかにしました。
本研究により見出された熱伝導率の新しい低減機構は、エネルギー変換デバイスとして様々な領域での活用が期待される高性能な熱電材料の開発の新たな指針となることが期待されます。
本研究成果は、2022年12月17日付けで、ドイツ科学雑誌 Advanced Materialsのオンライン版に掲載されました。
概略図.結晶構造内にトンネル空間を有した金属間化合物(Na–X–Sn系化合物, XはAl, Ga, In, Zn)では、トンネル内のNa原子はトンネルの伸長方向に沿って大きな振幅で振動(ラットリング)しており、それらNa原子の局所的な原子間距離(dNa–Na)が近い化合物ほど格子熱伝導率が低下することが明らかにされました。トンネル内の原子鎖様のラットリング原子が互いに強く相関することによって引き起こされる、熱伝導率の新しい低減機構です。
研究者情報
高津浩
陰山洋
書誌情報
タイトル
Correlated rattling of sodium-chains suppressing thermal conduction in thermoelectric stannides
著者
Takahiro Yamada, Masato Yoshiya, Masahiro Kanno, Hiroshi Takatsu, Takuji Ikeda, Hideaki Nagai, Hisanori Yamane, Hiroshi Kageyama
掲載誌
Advanced Materials