2022-01-31 東芝デバイス&ストレージ株式会社
当社は、GaN(窒化ガリウム)デバイスなどで構成されるハーフブリッジモジュール(以下、「HBモジュール」)にシャントMOS(Metal Oxide Semiconductor)電流センサーを内蔵することにより、損失が増加しにくい電流検出と高い電流検出精度を両立するとともに、機器の小型化を実現する集積回路技術を世界で初めて注1開発しました。今回開発した技術により、HBモジュール内蔵電流センサーを用いて電源システムをより高精度に制御することが可能となり、パワーエレクトロニクス機器の高効率化、信頼性向上、および小型化に貢献します。
近年、カーボンニュートラルに向けた世界的な省エネの潮流が高まっていることを背景に、パワーエレクトロニクス機器の高効率化を追求する動きが加速しています。また、その動きは様々な用途にわたっており、システムの小型化に対する要求も高まっています。従来、一般的な電源システムにおいては、HBモジュールと電流センサーがインダクターの両端にあることから、1パッケージに集積することは困難でした。また、電流検出用のシャント抵抗が使われていることから、電力消費(発熱)を抑えようとすると電流検出精度も低下してしまい、低損失かつ高精度な電流センサーを実現することが困難でした。
今回当社が開発した技術では、GaN素子にカスコード接続された低耐圧MOSFET (Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)注2を電流検出に利用することで、電流検出用シャント抵抗を不要とし発熱量を抑えるとともに、最適化された集積回路技術を用いることで、高精度な電流検出を可能としました。さらに、絶縁ICにキャリブレーション技術を適用することで広帯域と高精度を両立し、10 MHzを超える周波数帯域を実現しました。これにより、HBモジュール内に電流センサーを内蔵するだけでなく、スイッチング周波数向上、コンデンサーおよびインダクターの小型化も実現し、機器の小型化に貢献できます。
当社はGaNデバイスを含む、電力変換効率改善に貢献するパワー半導体事業を注力事業の一つと位置付け開発を進めています。本技術についても、パワーデバイス製品との組み合わせにより早期実用化を目指し、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献していきます。
なお、本技術の詳細は、応用物理学会物理系学術誌刊行センター発行の技術誌「JJAP (Japan Journal of Applied Physics)」に採択され、採択された原稿がACCEPTED MANUSCRIPTとして公開されています。
URL:https://iopscience.iop.org/article/10.35848/1347-4065/ac4446
また、昨年9月の半導体の固体素子および材料に関する国際学会2021 International Conference on Solid State Devices and Materials (SSDM)でも関連技術を発表しています。
注1: 2022年1月現在、当社調べ。
注2: ノーマリオンGaN素子と低耐圧MOSFETを組み合わせることで、ノーマリオフGaN素子を実現する構成方法。
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