パワー半導体における熱集中問題の解消に貢献
2021-09-21 科学技術振興機構,株式会社ロータス・サーマル・ソリューション,山陽小野田市立山口東京理科大学
ポイント
- パワー半導体の性能向上や半導体チップの小型化に伴い、電子回路の発熱密度が高まっているが、現在の冷却方法ではこの熱を十分に放出できなくなってきている。
- ロータス金属を沸騰型の冷却器に用いることで、効率良く熱を除去する冷却技術を開発した。
- 沸騰型冷却技術のコアとなる冷却器の設計技術を多種類の冷媒で確立したことにより、パワー半導体や高性能CPUなど幅広い発熱密度範囲の冷却に対応可能である。
JST(理事長 濵口 道成)は、研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) 企業主導フェーズ NexTEP-Bタイプの開発課題「自発的冷却促進機構を有する高性能車載用冷却器」において、目指していた成果が得られたと評価しました。この開発課題は、山陽小野田市立山口東京理科大学の結城 和久 教授らの研究成果をもとに、平成29年12月から令和3年3月にかけて株式会社ロータス・サーマル・ソリューション(代表取締役社長 井手 拓哉、本社:大阪府大阪市、資本金1億840万円)に委託し、実用化開発を進めていたものです。
大型サーバーに用いられる高性能CPUや、電気式ハイブリッド車(HEV)向けインバーターに利用されるパワー半導体では、集積密度の向上や、大電力化が進むと同時に半導体のパッケージも小型化が進んでいます。そのため、半導体の面積当たりの消費電力が増加し、その結果、発熱密度が高くなり、素子の耐熱限界に近づいているのが現状です。
ロータス・サーマル・ソリューションは、この問題に対する解決策として、ロータス金属を用いた高効率な沸騰冷却器を開発しました。次世代パワー半導体として期待されているシリコンカーバイド(SiC)の発熱密度は300~500ワット毎平方センチメートル(W/cm2)と言われ、SiCをデバイスに用いるためにはこれよりも大きな限界熱流束(Critical Heat Flux:CHF)を持った部材による冷却が必要となります。本開発では、ロータス金属を用いた沸騰促進技術を利用することで、従来の冷却器では200W/cm2程度であったCHFを、530W/cm2以上に向上させることに成功しました。
本開発により、高発熱密度に対応できる沸騰型冷却技術を確立したことから、車載用のSiC半導体によるインバーター回路や大型サーバー用高性能CPUを効率的に冷却するシステムの実現が期待されます。
研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)は大学、公的研究機関などで生まれた研究成果を、国民経済上重要な技術として実用化し、社会に還元することを目指す技術移転支援プログラムです。企業主導フェーズでは、大学などの研究シーズを用いて企業などが行う、開発リスクを伴う規模の大きい開発を支援し、実用化を後押しします。
※A-STEP企業主導フェーズ(NexTEP-Bタイプ/NexTEP-Aタイプ)は、令和2年度より「A-STEP企業主体(マッチングファンド型/返済型)」として公募しています。
URL:https://www.jst.go.jp/a-step/
<お問い合わせ先>
<開発内容に関すること>
井手 拓哉(イデ タクヤ)
株式会社ロータス・サーマル・ソリューション
<JST事業に関すること>
沖代 美保(オキシロ ミホ)
科学技術振興機構 産学共同開発部
<報道担当>
科学技術振興機構 広報課
株式会社ロータス・サーマル・ソリューション
山陽小野田市立山口東京理科大学 入試広報課