2021-07-21 アメリカ合衆国・サンディア国立研究所(SNL)
・ SNL が、電力グリッド規模のエネルギー貯蔵に向けた新しい溶融ナトリウム電池を開発。
・ 溶融ナトリウム電池は、太陽電池パネルや風力タービン等の再生可能エネルギー源によるエネルギーの貯蔵に使用されている。市販の溶融ナトリウム電池のナトリウム-硫黄電池では、作動温度が520℉~660℉(約 271℃~349℃)のところ、新電池はより低温の 230℉(約 110℃)で作動する。
・ 電池の作動温度が低下することで、コストの大幅な削減と安価な材料の使用が可能となる。このような低い作動温度は、ヨウ化ナトリウムと塩化ガリウムを使用した新しい陰極液の開発により実現した。
・ 新電池では、放電によりナトリウム金属がナトリウムイオンと電子を生成し、反対側では電子がヨウ素をヨウ化物イオンに変換する。ナトリウムイオンはセパレーターを通って移動し、ヨウ化物イオンと反応して溶融ナトリウムヨウ化物塩を形成する。特殊なセラミックセパレーターが、ナトリウムイオンのみを移動させる。
・ このような液体ベースの電池では、複雑な相変化を経る材料や分解する材料等の問題がなく、他の多くの電池のように寿命が制限されない。市販の溶融ナトリウム電池の寿命は、標準的な鉛電池やリチウムイオン電池よりも長い 10~15 年となっている。
・ 研究室規模の小型の新電池によるオーブン内での 400 回超の充放電サイクル試験を 8 ヶ月間実施。パンデミックのため実験を一ヶ月間停止して室温に冷えた新電池は、内部化学反応の劣化なく、暖めることで再び作動を開始した。大規模な発電障害等への対応での可能性を示唆する。
・ リチウムイオン電池のような発火の危険性もなく、セラミックセパレーターを取り外してナトリウム金属と塩が混ざっても激しい化学反応や発火が起こらない。
・市販の溶融塩ナトリウム電池よりも 40%高い、3.6V の動作電圧を提示。より高いエネルギー密度の達成と、より少ないセル数・セル間の接続での電池作動や全体のユニットの低コスト化が期待できる。
・ 今後は、高価な塩化ガリウムの代替に向けた陰極液の調整・改良と、充放電速度の高速化を図る。技術以外の商業化の課題が残るため、新電池の市場への導入は 5~10 年以内と考える。
・ 本研究は、米国エネルギー省(DOE)の Office of Electricity Energy Storage Program が支援した。
URL: https://newsreleases.sandia.gov/better_batteries/
<NEDO海外技術情報より>
(関連情報)
Cell Reports Physical Science 掲載論文(フルテキスト)
A high-voltage, low-temperature molten sodium battery enabled by metal halide catholyte chemistry
URL: https://www.cell.com/cell-reports-physical-science/fulltext/S2666-3864(21)00189-2