(Decades of research brings quantum dots to brink of widespread use)
2021-08-06 アメリカ合衆国・ロスアラモス国立研究所(LANL)
・ 約 30 年間にわたりコロイド状半導体量子ドット(QD)の研究開発を実施する LANL が、その研究概要、技術的進展の評価や商用化に向けて対処すべき課題について報告。
・ 30 年前は単に科学的な興味の対象であった QD は、既存・新興技術で利用可能な材料への成長を遂げ、すでに商業市場に参入している。最新のコロイド化学を活用した原子レベルに近い精度でのQDサイズと内部構造の操作により、その物理特性と実用デバイスでの挙動の高精度制御が可能となっている。
・ QD のサイズの制御による発光色の調整および 100%に近い高発光量子収率は、蛍光体として QDを使用するディスプレイや照明等のアプリケーションに有用であり、QD の実用化を促進している。技術的に成熟した QD テレビ等のデバイスは、すでに市場での入手が可能となっている。
・ QD のアプリケーションの次の分野とされる QD LEDs の研究開発においては、性能の制限要因である非発光オージェ再結合等の理解が進み、すでに高輝度を達成。理論限界に近い効率性を実現している。
・ また、水溶液処理が可能な QD レーザーについて、その実現が光集積回路、光通信、ラボ・オン・チッププラットフォームやウェアラブルデバイス等の多様な技術に有益であることに言及。LANL は、コロイド状ナノ構造での光増幅メカニズムの解明や、QD によるレーザー効果の初実証を通じて同技術分野の主要な進展に貢献している。
・ さらに、太陽光発電や発光型太陽光集光器(LSC)での QD の可能性について説明。ロール・ツー・ロール等のスケーラブルな技術で製造できる次世代の低コスト・薄膜 PV デバイスと、窓ガラスや外壁材を発電デバイスに変換する LSC を組み合わせることで、クリーンなエネルギー供給が可能となる。LSC のコンセプトは 1970 年代に生まれたものだが、特殊設計の QD の出現により近年進展を遂げている。
・ LANL は、自律的な光吸収の課題に対処する実用的なアプローチの策定や、高効率二重層(タンデム)デバイスの開発等を通じて LSC 技術分野の進展に貢献している。LANL のスピンオフである UbQD Inc.が、量子ドッド LSC 技術の商用化を積極的に進めている。
・ 本研究には、LANL、米国エネルギー省(DOE)および DOE 科学局の Laboratory Directed Research and Development(LDRD)プログラムが資金を提供した。
URL: https://discover.lanl.gov/news/releases/0805-quantum-dots
<NEDO海外技術情報より>
(関連情報)
Science 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Semiconductor quantum dots: Technological progress and future challenges
URL: https://science.sciencemag.org/content/373/6555/eaaz8541