次世代磁性材料:反強磁性体の持つ普遍的機能性の実証 ~デバイス形状にとらわれない巨大磁気応答~

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2021-02-25 東京大学,理化学研究所,科学技術振興機構

ポイント
  • 次世代磁性材料として世界的に注目が集まる反強磁性体において、試料形状によらず任意の方向に指向可能な巨大磁気応答を観測。
  • 不揮発性磁気メモリー開発へつながる新たな多値記憶機能を実証。
  • デバイス形状の自由度が高く、磁場擾乱(じょうらん)に強い異常ネルンスト熱流センサーを開発。

東京大学 大学院理学系研究科 肥後 友也 特任准教授(研究当時:東京大学 物性研究所 特任助教)、東京大学 大学院理学系研究科、新領域創成科学研究科、物性研究所およびトランススケール量子科学国際連携研究機構の中辻 知 教授らの研究グループは、同研究所・同機構 大谷 義近 教授(理化学研究所 創発物性科学研究センター チームリーダー 併任)、理化学研究所 創発物性科学研究センター 近藤 浩太 上級研究員、米国Johns Hopkins大学 C. L. Chien 教授らの研究グループと共同で、省電力・超高速・超高密度化が求められるビヨンド5G世代の磁気デバイスの中心素材として注目を集めている反強磁性体であるマンガン化合物MnSnにおいて、これまでデバイス作製の際に課題となっていた形状(形状磁気異方性)の影響を受けずに、全方向へ指向可能な巨大磁気応答を得られるという特性を見いだしました。また、この特性を用いて、次世代のメモリー開発に有用な新たな多値記憶機能の実証や、デバイス形状の自由度が高く、外部磁場擾乱に強い異常ネルンスト熱流センサーの開発に成功しました。

反強磁性体は(i)スピンのダイナミクスがテラヘルツ帯と強磁性体の場合に比べて2~3桁ほど速い、(ii)漏れ磁場を作らない、(iii)材料選択の自由度が高い、という特性を持ちます。そのため、既存の磁気デバイスで用いられている強磁性体を代替することで、デバイスのさらなる高速・高密度化が期待できます。今回本研究グループが実証した(iv)形状磁気異方性が無視できるほど小さく、デバイス形状の自由度が高い、という特性は、上記(i)~(iii)の特性と併せて、反強磁性体を用いた次世代の磁気デバイス開発にブレークスルーをもたらすことが期待できます。

本研究成果はドイツ国際科学誌「Advanced Functional Materials」において、2021年2月25日付け(中央ヨーロッパ時間)オンライン版に公開される予定です。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)「トポロジカル材料科学に基づく革新的機能を有する材料・デバイスの創出」研究領域(研究総括:上田 正仁)における研究課題「電子構造のトポロジーを利用した機能性磁性材料の開発とデバイス創成」課題番号JPMJCR18T3(研究代表者:中辻 知)、同CREST「微小エネルギーを利用した革新的な環境発電技術の創出」研究領域(研究総括:谷口 研二、研究副総括:秋永 広幸)における研究課題「トポロジカルな電子構造を利用した革新的エネルギーハーヴェスティングの基盤技術創製」課題番号JPMJCR15Q5(研究代表者:中辻 知)、文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域「J-Physics:多極子伝導系の物理」課題番号15H05882(研究代表:播磨 尚朝)における研究計画班「A01:局在多極子と伝導電子の相関効果」課題番号15H05883(研究代表者:中辻 知)、科研費(No.16H06345, 強相関物質設計と機能開拓-非平衡系・非周期系への挑戦-)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム/ワイル磁性体を用いた熱発電デバイスの研究開発」の一環として行われました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Omnidirectional Control of Large Electrical Output in a Topological Antiferromagnet”
DOI:10.1002/adfm.202008971
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
肥後 友也(ヒゴ トモヤ)
東京大学 大学院理学系研究科 物理学専攻 特任准教授

中辻 知(ナカツジ サトル)
東京大学 大学院理学系研究科 物理学専攻/東京大学 物性研究所 量子物質研究グループ/トランススケール量子科学国際連携研究機構 教授

<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道担当>
東京大学 大学院理学系研究科・理学部 広報室
吉岡 奈々子(ヨシオカ ナナコ) 学術支援職員、飯野 雄一(イイノ ユウイチ) 教授・広報室長

東京大学 物性研究所 広報室
理化学研究所 広報室 報道担当
科学技術振興機構 広報課

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