2020/12/7 アメリカ合衆国・カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)
・ UCSB、Carpenter Technologies およびオークリッジ国立研究所(ORNL)が、3Dプリンティングによる積層造形の課題を克服する、コバルト(Co)とニッケル(Ni)ベースの超合金を新たに開発。
・ 金属部品の 3D プリンティングには、レーザービームや電子ビームを照射し、サブミリメートルサイズの「プール」で微細な金属粉末粒子を溶融してオブジェクトを積層造形するレーザー溶融法(SLM)や、電子ビーム溶解法(EBM)がある。
・ 過酷な環境下で機能できる高強度の金属合金は、これらの 3D プリンティングによる液状での製造過程や製造後の熱処理等で割れてしまうものが多い。性能・エネルギー効率を飛躍的に改善できる新設計の 3D プリンティング製造において、現在航空機エンジン等で利用されている合金の利用は難しい。
・ 新超合金は、このような割れの問題を解決し、高性能を要する高ストレス環境下で利用できる複雑なカスタムコンポートネント製造において積層造形の利用を促進するもの。
・ 3D プリントに適した高強度、耐欠損性の新超合金は、同量のコバルト(Co)とニッケル(Ni)に微量の他元素を加えたもので、合金の多くではそれらの融解温度の 50%で崩壊するところ、最高 90%まで材料構造を維持する。
・ EBM やより煩雑なレーザー粉末床によるクラックフリーの 3D プリンティングに適し、市場に参入している多様なプリンティング機器での利用が期待できる。高温度下で優れた機械特性を示すため、航空機エンジンの高温部で使用される単結晶(SX)タービンブレードやベーン等の構造部品に適する。
・ 本研究は、2017 年に米国防総省(DOD)が提供した 3 百万ドルの Vannevar Bush Faculty Fellowship
(VBFF)により実施された。VBFF は、変革的な影響を及ぼす可能性のある基礎研究を支援する最も名誉ある single-investigator award である。
・ 今回の同新超合金の開発は、米政府のマテリアルズ・ゲノム・イニシアティブ(MGI)に沿った、米国立科学財団(NSF)が資金を提供するプロジェクトの一部として実施された過去の研究を基に進展した。MGI は「半分のコストと 2 倍の速さで」高度な材料を開発することで、社会における重要な課題に対処する研究の支援を目標としている。
URL: https://www.news.ucsb.edu/2020/020115/standout-superalloy
<NEDO海外技術情報より>
(関連情報)
Nature Communications 掲載論文(フルテキスト)
A defect-resistant Co-Ni superalloy for 3D printing
URL: https://www.nature.com/articles/s41467-020-18775-0
Abstract
Additive manufacturing promises a major transformation of the production of high economic value metallic materials, enabling innovative, geometrically complex designs with minimal material waste. The overarching challenge is to design alloys that are compatible with the unique additive processing conditions while maintaining material properties sufficient for the challenging environments encountered in energy, space, and nuclear applications. Here we describe a class of high strength, defect-resistant 3D printable superalloys containing approximately equal parts of Co and Ni along with Al, Cr, Ta and W that possess strengths in excess of 1.1 GPa in as-printed and post-processed forms and tensile ductilities of greater than 13% at room temperature. These alloys are amenable to crack-free 3D printing via electron beam melting (EBM) with preheat as well as selective laser melting (SLM) with limited preheat. Alloy design principles are described along with the structure and properties of EBM and SLM CoNi-base materials.