2021-01-08 京都大学
田中孝明 理学研究科助教らの研究グループは、1572年に起こったIa型超新星の残骸である「ティコの超新星残骸」の衝撃波の膨張が、予想を遥かに上回るペースで減速していることを発見しました。
Ia型超新星は、宇宙論研究において距離測定のための標準光源として用いられています。また、宇宙の重元素合成の主要な現場の一つとしても知られています。しかし、その爆発機構については、論争が続いており、宇宙物理学の重要課題の一つに挙げられています。
本研究グループは、米国のX線天文衛星チャンドラによって2003年、2007年、2009年、2015年に得られた観測データを解析することで、膨張の急激な減速を発見しました。これは、密度の低い空洞を進んでいた衝撃波が、最近になって密度の高いガスの壁と衝突したと考えると、うまく説明できます。Ia型超新星については、白色矮星と恒星による連星系が引き起こすという説と、白色矮星同士の連星系が引き起こすという説がありますが、本結果は、このうち前者を支持するものです。
本研究成果は、2021年1月7日に、国際学術誌「The Astrophysical Journal Letters」のオンライン版に掲載されました。
図:チャンドラ衛星によって得られたティコの超新星残骸のX線画像。青色に見える外縁部の細い筋が衝撃波に対応します。今回、その膨張が急激に減速していることを発見しました。
研究者情報
研究者名:田中孝明