スピン状態間のエネルギー差を直接求めることができる新規量子アルゴリズムの開発に成功

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量子化学計算の常識を覆す新手法

2020-12-24 大阪市立大学,科学技術振興機構

ポイント
  • 量子コンピュータを用いると、原子・分子のエネルギーを精密に求める量子化学計算が超高速で実行できる。
  • 分子は「スピン量子数」が異なると化学反応性なども異なるため、エネルギーが最も低い基底状態のスピン量子数を決定すること、および「スピン量子数」が異なる電子状態(スピン状態)間のエネルギー差を正確に求めることは極めて重要である。
  • これまで、スピン状態間のエネルギー差を求めるには、それぞれのスピン状態の全エネルギーを計算する必要があった。
  • 量子力学の根本原理である「量子重ね合わせ状態」を上手に利用し、ベイズ推定による機械学習と組み合わせることにより、従来法よりも容易に量子コンピュータに実装でき、スピン状態間のエネルギー差を直接計算できる新規量子アルゴリズムの開発に成功した。

大阪市立大学 大学院理学研究科の杉﨑 研司(スギサキ ケンジ) 特任講師、佐藤 和信(サトウ カズノブ) 教授、工位 武治(タクイ タケジ) 名誉教授らの研究チームは、量子コンピュータを用いて、スピン量子数が異なる電子状態(スピン状態)間のエネルギー差を直接計算することができる新規量子アルゴリズムを発表しました。

これまで、スピン状態間のエネルギー差を求めるには、たとえ量子コンピュータを用いたとしても、異なるスピン状態の全エネルギーをそれぞれ求める必要がありましたが、本成果はそのような量子化学計算の常識を覆すものです。

本研究成果は、国際学術誌「Chemical Science」(オープンアクセス)に、2020年12月24日(日本時間)掲載予定です。

本研究は、AOARD Scientific Project on “Molecular Spins for Quantum Technologies”(Award No.FA2386-17-1-4040,4041)、JSPS 科研費基盤研究B(Grant No.17H03012)および基盤研究C(18K03465)、JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「量子化学計算の高効率量子アルゴリズムの開発」(JPMJPR1914)の対象研究です。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“A quantum algorithm for spin chemistry: a Bayesian exchange coupling parameter calculator with broken-symmetry wave functions”
DOI:10.1039/d0sc04847j
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
杉﨑 研司(スギサキ ケンジ)
大阪市立大学 大学院理学研究科 物質分子系専攻 特任講師

工位 武治(タクイ タケジ)
大阪市立大学 大学院理学研究科 名誉教授

<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道担当>
大阪市立大学 広報課(西前)
科学技術振興機構 広報課

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