3月以降に出荷できる高糖度晩生カンキツ新品種「あすき」苗木の流通開始

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2020-12-17 農研機構

ポイント

  • 農研機構は、極めて高糖度で風味に優れ、3月以降に出荷できる晩生カンキツ新品種「あすき」を育成しました。2020年12月頃から苗木の流通が開始される予定です。
  • 「あすき」は、露地栽培で安定して高糖度の果実を生産できます。また、カットした果肉からの果汁の流出(ドリップ)が少ないため、最近消費が伸びているカットフルーツ1)にも適しており、普及が期待されます。

概要

糖度が高く、食味の良いカンキツ品種は数多く育成されてきましたが、1~2月に成熟2)するものが主流で、3月以降に成熟し、かつマルチ栽培等特別な栽培管理をしない露地栽培においても高糖度果実を安定して生産できる品種はほとんどありませんでした。また、近年、生鮮果実の消費が停滞する中で、カットフルーツとしてパック詰めされた商品の販売は伸びており、外食等業務用として加工しやすい果実の需要が高まっています。しかしながら、近年育成された良食味カンキツの多くは、カットした果肉からの果汁の流出(ドリップ)が多く、商品性を損なうことが問題となっていました。
そこで農研機構では、露地栽培でも糖度が十分高くなり、3月に成熟する晩生品種で、カットした際のドリップが少ないカンキツ「あすき」を育成しました。これにより、食味の良いカンキツの出回りが少ない3月以降に高糖度の果実を供給することが可能になります。また、ドリップの少ない「あすき」はカットフルーツとしての利用に適しているので、果実消費の拡大に貢献すると期待されます。「あすき」は全国のカンキツ産地で栽培が可能ですが、成熟期が3月になるため、果実の凍結によるす上がり3)の発生等を受けにくい冬期に-2~-3°Cを下回らない、温暖な地帯での栽培に適しています。
「あすき」の苗木は、日本果樹種苗協会と許諾契約を締結した果樹苗木業者によって2020年12月頃から流通が開始される予定です。

関連情報

予算:運営費交付金(平成4年~28年)、農林水産省委託プロジェクト「加工適性果樹」(平成26年~28年)、
品種登録出願番号:第32235号(平成29年11月16日出願公表)

問い合わせ先

研究推進責任者 :農研機構果樹茶業研究部門 研究部門長 高梨 祐明

研究担当者 :同 カンキツ研究領域 ユニット長 野中 圭介

広報担当者 :同 研究推進室 大崎 秀樹

詳細情報

新品種「あすき」の特徴

1.「あすき」の成熟期は、ほとんどの国産高糖度カンキツ品種の収穫期が終わった後となる2月下旬から3月です(表1)。

2.「あすき」の果実をナイフでカットすると、果肉からのドリップ量は、現在カットフルーツとして利用さているスイートオレンジと同じくらい少なく、カットフルーツとしての利用適性に優れます(図1、表2)。

3.「あすき」は、オレンジ香を有する良食味の育成系統「カンキツ興津46号」と中生の高糖度品種「はるみ」の交配により育成した品種です。

品種の名前の由来

カンキツ産業の未来(明日あす)を明るく輝かせる(希望を与える)品種となることを期待して命名しました。また、同じ交配組み合わせから育成した「あすみ」とともに姉妹をイメージしていただくことも期待しています。

用語の解説
1)カットフルーツ
ナイフ等で、果皮等の不可食部を除去し、食べやすい形態に切り分けた果肉を外食などの業務用やパックに詰めた状態で提供・販売する商品形態。
2)成熟(期)
カンキツの場合、果皮の着色が完了するとともに、糖がある程度蓄積し、クエン酸含量が1%以下となると概ね可食期と判断し、さらに成熟が進むと食味や香りが向上し、成熟期となります。
3)す上がり
低温により果肉の凍結が一定時間以上に及び、さじょう(果肉のつぶつぶ)の膜が破壊されて果肉から果汁が失われる現象のことです。
参考図

表1.「あすき」の果実特性

図1 「あすき」の果実

1202農芸化学
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