バイオジェット燃料の普及を推進する研究開発6件を始動

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早期の市場形成と社会実装、基盤技術の確立を目指す

2020-10-05 新エネルギー・産業技術総合開発機構

NEDOはバイオジェット燃料の普及に向け、市場形成や社会実装を後押しするサプライチェーンの構築と、カーボンリサイクルに寄与する原料の基盤技術を強化する研究開発に着手します。

本事業では純バイオジェット燃料の一貫製造技術を確立するだけでなく、サプライチェーンの構築を視野に事業化スキームや経済性を検証し、早期の市場形成を促します。またバイオジェット燃料の原料となる微細藻類について、安定的に大量培養する技術を確立するとともに、研究拠点を整備します。これにより商用化にあたっての課題解決や標準化を進め、培養技術を活用したカーボンリサイクルの実現につなげます。本事業を通してバイオジェット燃料の普及に道筋をつけ、航空分野における温室効果ガスの排出量削減に貢献します。

1.概要

長期的には今後の拡大が見込まれるとする航空需要予測を背景に、国際民間航空機関(ICAO)をはじめとした航空業界はCO2排出量を削減する地球温暖化抑止対策を喫緊の課題と捉えています。これに対し、バイオマスから作るバイオジェット燃料の導入は実現可能性が高い手段の一つと位置づけられており、海外ではすでに廃食用油などを原料にしたバイオジェット燃料が実用化・商用化されています。一方、日本国内でもパリ協定に基づく温室効果ガス排出削減目標を達成すべく、カーボンリサイクルなど脱炭素社会を形成する取り組みが進んでいます。航空分野においても、2020年中にバイオジェット燃料を国内定期便に供給した商用飛行のデモフライトを予定するなど、事業化に向けた動きが活発になっています。

こうした背景から、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2017年度から「バイオジェット燃料生産技術開発事業※1/一貫製造プロセスに関するパイロットスケール試験」を実施しており、2030年頃の商用化を念頭にバイオジェット燃料を一貫製造する技術の確立を目指しています。これらの取り組みを確実に商用化へとつなげるため、このたびバイオジェット燃料の市場形成に向けたサプライチェーンの構築を促進する2件の研究開発テーマと、微細藻類の大量培養技術の確立によりカーボンリサイクルなど脱炭素社会の形成を促進する3件の研究開発テーマを採択しました。

また、2019年9月に経済産業省から示された「カーボンリサイクル3Cイニシアティブ」および2020年1月に策定された「革新的環境イノベーション戦略」(統合イノベーション戦略推進会議)において、石炭ガス化複合発電(IGCC)※2や石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)※3と、発生するCO2を分離・回収する実証事業を進める広島県の大崎上島をカーボンリサイクル技術の実証研究拠点として整備するとされたことを受け、微細藻類研究につながる拠点を整備し研究開発を実施する1件の研究開発テーマを採択しました。

2.採択テーマおよび実施予定先

【1】実証を通じたサプライチェーンモデルの構築

純バイオジェット燃料※4の製造にあたり、油脂原料からHEFA技術※5やCHJ技術※6を使うモデルと、再生利用が難しい短繊維パルプからAlcohol to JET技術(ATJ)※7によって製造するモデルの2テーマを採択しました。本事業では純バイオジェット燃料の一貫製造技術を確立するとともに、原料調達の持続可能性や製品供給を含むサプライチェーンの構築を視野に入れ、これらの事業スキームや経済性について検証することで市場形成を促進します。さらに、化石エネルギー収支や温室効果ガス削減効果といった環境影響評価にも取り組みます。

バイオジェット燃料のサプライチェーンイメージ

図1 バイオジェット燃料のサプライチェーンイメージ
テーマ名 実施予定先
油脂系プロセスによるバイオジェット燃料商業サプライチェーンの構築と製造原価低減 株式会社ユーグレナ
国産第二世代バイオエタノールからのバイオジェット燃料生産実証事業 株式会社Biomaterial in Tokyo
三友プラントサービス株式会社

【2】微細藻類基盤技術開発

微細藻類には成長の過程において油脂などを蓄える種があり、培養後に回収した微細藻類から油脂などを抽出し改質することにより純バイオジェット燃料を製造することができます。特に微細藻類は光合成により二酸化炭素を吸収することからカーボンリサイクル技術の一つとして位置づけられており、将来のバイオジェット燃料需要への対応において重要である大量培養方法についてそれぞれ異なる特長をもつ3テーマを採択しました。いずれも実用化を検討しやすい1ユニット単位で実証することで、安定的に大量培養する技術を確立します。併せて、バイオジェット燃料の生産コスト低減や副生物の有効利用にも取り組みます。また微細藻類の研究拠点を整備し、商用化にあたっての課題解決や標準化を図る1テーマも採択しました。微細藻類の培養技術を活用し、カーボンリサイクルの実現を目指します。

微細藻類を活用したカーボンリサイクルのイメージ

図2 微細藻類を活用したカーボンリサイクルのイメージ
テーマ名 実施予定先 備考
海洋ケイ藻のオープン/クローズ型ハイブリッド培養技術の開発 電源開発株式会社
熱帯気候の屋外環境下における、発電所排気ガスおよびフレキシブルプラスティックフィルム型フォトバイオリアクター技術を応用した大規模微細藻類培養システムの構築および長期大規模実証に関わる研究開発 株式会社ちとせ研究所
微細藻バイオマスのカスケード利用に基づくバイオジェット燃料次世代事業モデルの実証研究 株式会社ユーグレナ
株式会社デンソー
伊藤忠商事株式会社
三菱ケミカル株式会社
微細藻類由来バイオジェット燃料生産の産業化とCO2利用効率の向上に資する研究拠点及び基盤技術の整備・開発 一般社団法人日本微細藻類技術協会
ⅰ 微細藻類基盤技術実証 ⅱ 微細藻類研究拠点における基盤技術開発
【注釈】
※1 バイオジェット燃料生産技術開発事業
事業期間:2017~2024年度
事業予算:49.5億円(2020年度)
※2 石炭ガス化複合発電(IGCC)
石炭をガス化して、ガスタービンと蒸気タービンの2種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行う発電方式。
(Integrated Coal Gasification Combined Cycle)
※3 石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)
石炭をガス化して、燃料電池とガスタービン、蒸気タービンの3種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行う発電方式。
(Integrated Coal Gasification Fuel Cell Combined Cycle)
※4 純バイオジェット燃料
従来の化石由来ジェット燃料と混合する前のバイオマス由来ジェット燃料。航空機に搭載する際には純バイオジェット燃料を定められた混合率以下になるように化石由来ジェット燃料と混合する必要がある。混合後の燃料をバイオジェット燃料と呼び、純バイオジェット燃料と区別される。
※5 HEFA(Hydroprocessed Esters and Fatty Acids)技術
廃食油や植物油を水素化処理および脱酸素化することで目的の燃料油を製造する技術。
※6 CHJ(Catalytic Hydrothermolysis Jet)技術
廃食油や植物油を超臨界水熱分解による不飽和脂肪酸の環化反応後、水素化処理および脱酸素化することで目的の燃料油を製造する技術。
※7 ATJ(Alcohol to JET)技術
アルコールをエチレンなどに脱水し重合することにより目的の燃料油を製造する技術。
3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 新エネルギー部 担当:古川、中森、柴原、吉田、木邑、小林

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:鈴木(美)、坂本

0502有機化学製品0503燃料及び潤滑油
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