カーボンリサイクル技術の世界最先端の取り組みで実用化を目指す
2020-07-14 新エネルギー・産業技術総合開発機構
NEDOはCO2を資源として捉えて有効利用を図るカーボンリサイクル技術として、化石燃料由来の化学品を代替することを目的に、CO2を原料としたパラキシレン製造の技術開発事業に着手します。
本事業は、CO2を原料としたパラキシレンを製造するための画期的な触媒の改良や量産技術の開発、プロセス開発を実施するとともに、経済性やCO2削減効果を含めた事業性の検討を行うものです。パラキシレンはポリエステル繊維やペットボトルなどの生産に必要となる重要な化学品ですが、これをCO2から工業的に製造する実用的な技術は確立されていません。NEDOは、日本独自技術として、世界最先端の取り組みを通じて実用化を目指します。
1.概要
火力発電や各種工場から排出されるCO2の削減は気候変動対策として重要であり、またCO2を資源として捉えて、回収し、有効利用する「カーボンリサイクル技術」の開発が求められています。経済産業省で昨年6月に策定された「カーボンリサイクル技術ロードマップ」では、CO2を素材や燃料へ利用することなどを通して大気中へのCO2排出を抑制していく方針が示されており、今年1月に政府で策定された「革新的環境イノベーション戦略」においても、カーボンリサイクル技術によるCO2の原燃料化を通じた産業分野の温室効果ガス排出削減の方向性が明記されています。
化学品へのCO2利用技術は、既存の化石燃料由来化学品に代替することによってCO2の排出削減および固定化に繋がること、また高付加価値品製造に利用可能であることから実現が期待されています。現状では基礎レベルにある研究が多いなかで、今後重点的に技術開発に取り組むべき分野と言えます。
こうした中、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、図に狙いを示す通り、CO2を原料としたパラキシレン※1製造の技術開発に着手します。パラキシレンは、高純度テレフタル酸(PTA)※2を経由してポリエステル繊維やペットボトル用樹脂などに加工される化合物で、工業上極めて重要な基礎化学品です。その組成上、他の化学品に比べて製造時に必要な水素原料が少なくて済むため、より低コストで多くのCO2を固定できます。パラキシレンの世界需要は約4,900万トン/年あり、仮に全てをCO2原料に切り替えた場合のCO2の固定量は約1.6億トン/年に上ります。
本事業では、CO2からパラキシレンを製造するための画期的な触媒の改良や量産技術の開発、プロセス開発を実施するとともに、全体の経済性やCO2削減効果を含めた事業性の検討を行います。CO2を原料としてパラキシレンを工業的に製造する技術は確立されていません。NEDOは、日本独自技術として、世界最先端の取り組みを通じて実用化を目指します。
図 現在の工業的パラキシレンおよびポリエステルの製造の流れ(上)と本事業の狙い(下)
2.事業内容
- 事業名:
- CO2を原料としたパラキシレン製造に関する技術開発
- 研究開発項目:
- 1) 触媒開発(新規触媒の性能向上、長寿命化等)
- 2) 触媒のスケールアップ開発(触媒構成成分の大量合成、工業触媒向けの成形等)
- 3) プロセス開発(最適プロセスフロー、最適運転条件の確立等)
- 4) 事業性検討(反応経路に応じた経済性とCO2削減効果の評価、市場調査)
- 委託予定先:
- 国立大学法人富山大学、日本製鉄株式会社、日鉄エンジニアリング株式会社、ハイケム株式会社、千代田化工建設株式会社、三菱商事株式会社
- 事業期間:
- 2020年度~2023年度(予定)
- 予算:
- 19.9億円
【注釈】
- ※1 パラキシレン
- 芳香族炭化水素であり、ポリエステル繊維やペットボトル用樹脂の原料となる高純度テレフタル酸(PTA)の原料として用いられる。化学式ではC8H10で表される。
- ※2 高純度テレフタル酸(PTA)
- 芳香族カルボン酸の一つで、PTAはパラキシレンを酸化させることで得られる(化学式はC8H6O4)。PTAとエチレングリコールを反応させることでポリエチレンテレフタラート(PET)が得られ、PETはポリエステル繊維やペットボトル用樹脂の原料となる。
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 環境部 担当:荒川、新郷、在間
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:鈴木(美)、佐藤、坂本