Graphene-reinforced carbon fiber may lead to affordable, stronger car materials
2020/5/18 アメリカ合衆国・ペンシルベニア州立大学(PennState)
・ Penn State、バージニア大学、オークリッジ国立研究所(ORNL)が産業パートナーの Solvay および Oshkosh による研究チームが、コンピュータ・シミュレーションと研究室での実験により、炭素繊維の製造プロセスに微量の 2D 材料グラフェンを添加することで製造コストを低減しながら材料を強化する方法を開発。
・ 長年にわたり航空機の製造を支えてきた軽量、強固で頑丈な炭素繊維は、乗客の安全を守る完璧なアプリケーションだが、現在の製造手法では製品が高額になる。これらの優れた特性をより容易に実現する方法が見つかれば、さらに軽量、低コストで安全な製品が製造できると考える。
・ 炭素繊維の現在の価格は約$15/1lb(約 0.45kg)。同研究チームは現行の製造方法を変更することで$5/1lb を目指す。最高$900/1lb の他種類の炭素繊維の製造コストも低減する可能性が期待できる。
・ 炭素繊維は、高価なポリマーのポリアクリルニトリル(PAN)より製造され、この PAN の価格が炭素繊維の製造コストの約 50%を占めている。今日の市場で取引される炭素繊維の 90%で PAN が使用されているが、製造に膨大な量のエネルギーを要する。製造プロセスでは、最初に PAN の繊維を200~300℃で加熱して酸化させた後、1,200~1,600℃の加熱で原子を炭素に転換。最後に 2,100℃での加熱で分子を整列させる。炭素繊維の強さと硬さの獲得には、この一連のプロセスが必須。
・ 本研究では、最初のプロセスで 0.075 重量%の微量のグラフェンを添加することで、従来の PAN ベースの炭素繊維に比べ強度が 225%、硬度が 184%向上することを報告。Institute for Computational and Data Sciences(ICDS)の Advanced CyberInfrastructure 等、複数のスーパーコンピューターを駆使し、一連の小・大規模シミュレーションによる化学反応の見識を収集。また、Penn StateのMaterial Research Institute(MRI)にて、材料の特性について調査した。
・ グラフェンの平坦な構造が、炭素繊維の製造プロセスにおいて不可欠な、繊維全体での PAN 分子の整列を助ける。さらに、グラフェンのエッジは高温度下で触媒特性を呈するため、残存した PANがこれらのエッジ周辺に凝集する。
・ 規模の異なる実験を通じ、グラフェン添加のプロセスの有効性を確認し、それを原子レベルで理解できた。この知見により、同プロセスのさらなる最適化が可能となる。製造ステップを 1 つ以上削減することでコストがさらに低減できるため、より安価な前駆体を使用する方法の可能性を探る。
・ 本研究は、米国エネルギー省(DOE)と米国立科学財団(NSF)が支援した。
URL: https://news.psu.edu/story/620332/2020/05/18/research/graphene-reinforced-carbonfiber-may-lead-affordable-stronger-car
<NEDO海外技術情報より>
(関連情報)
Science Advances 掲載論文(フルテキスト)
Graphene reinforced carbon fibers
URL: https://advances.sciencemag.org/content/6/17/eaaz4191
Abstract
The superlative strength-to-weight ratio of carbon fibers (CFs) can substantially reduce vehicle weight and improve energy efficiency. However, most CFs are derived from costly polyacrylonitrile (PAN), which limits their widespread adoption in the automotive industry. Extensive efforts to produce CFs from low cost, alternative precursor materials have failed to yield a commercially viable product. Here, we revisit PAN to study its conversion chemistry and microstructure evolution, which might provide clues for the design of low-cost CFs. We demonstrate that a small amount of graphene can minimize porosity/defects and reinforce PAN-based CFs. Our experimental results show that 0.075 weight % graphene-reinforced PAN/graphene composite CFs exhibits 225% increase in strength and 184% enhancement in Young’s modulus compared to PAN CFs. Atomistic ReaxFF and large-scale molecular dynamics simulations jointly elucidate the ability of graphene to modify the microstructure by promoting favorable edge chemistry and polymer chain alignment.