原始惑星に引かれるガスの動きをアルマ望遠鏡が捉えた

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2019-12-05  国立天文台

アルマ望遠鏡を用いた天文学者たちのチームは、今回初めて、原始惑星系円盤内で三次元的なガスの流れを目撃しました。HD 163296と呼ばれる若い星を取り巻く円盤内の3ヵ所で、ガスが滝のように隙間に流れ込んでいる様子を捉えたのです。この隙間は、形成中の惑星によって作られた可能性が最も高いと考えられます。このようなガスの流れは長い間予測されてきたもので、ここから生まれる惑星の大気の化学組成に直接影響を与えます。本研究は、科学雑誌「ネイチャー」で発表されました。

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ガスが滝のように原始惑星系円盤の隙間に流れ込む様子の想像図。この隙間は、生まれたばかりの惑星によって引き起こされる可能性が最も高いと考えられます。
Credit:NRAO / AUI / NSF, S. Dagnello.

惑星が誕生する現場は、若い星のまわりにある、ガスや塵でできた円盤の中です。天文学者たちは惑星形成過程を理解するため、この円盤、いわゆる原始惑星系円盤を研究しているのです。アルマ望遠鏡によって得られた美しい円盤の画像は、塵の中の隙間や円盤の特徴をはっきり示しています。この特徴は、生まれたばかりの惑星によって引き起こされる可能性が高いのです。

科学者たちは、円盤内の隙間が惑星によって引き起こされていることを確認するため、さらには惑星形成の完全な理解を得るために、塵だけでなく円盤内のガスも研究しています。原始惑星系円盤の質量の99パーセントは、ガスが占めています。ガスの中で最も明るく輝くのが一酸化炭素(CO)ガスであり、アルマ望遠鏡で観測することができます。

昨年、天文学者たちの2つのチームは、ガスを使った新しい惑星発見法を実証しました。彼らは、若い星HD 163296のまわりの円盤内で公転する一酸化炭素(CO)ガスの速度を測定したのです。公転運動から逸脱した動きを示すガスによって、円盤内に存在する3つの惑星のような構造の存在を明らかにしました。

論文の筆頭著者であるミシガン大学のリチャード・ティーグ氏らは、より詳しくガスの速度を研究するため、アルマ望遠鏡で観測された最新の高解像度データを用いました。「我々は、アルマ望遠鏡の高品質なデータを用いて、1方向だけでなく3方向のガスの流れを測定することに成功しました。」とティーグ氏は述べています。「我々は初めて多方向のガスの動きを測定できたのです。円盤内のガスは、星の周りを回転したり、星に近づいたり遠ざかったり、円盤内を上下に移動したりしています。」

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科学者たちは、原始惑星系円盤内のガス(矢印)の流れを3つの方向で測定しました。星のまわりを回転したり、星に近づいたり遠ざかったり、円盤内を上下に移動したりします。右側の拡大図は、若い星HD 163296のまわりの軌道上にある惑星が、ガスや塵を押しのけて隙間を開けるところを示しています。
Credit:NRAO / AUI / NSF, B. Saxton.

ティーグ氏らの研究チームは、円盤内の異なる3ヵ所で、上層から中層に向かって移動するガスの流れを見つけました。「若い星をまわる軌道にある惑星が、ガスや塵を押しのけて隙間を開けている可能性が高いと考えています。」とティーグ氏は説明します。「隙間の上層にあるガスが滝のように流れ込み、円盤内でガスの回転流を引き起こすのです。」

これは、若い星HD 163296のまわりに実際に惑星が形成されていることを示す最良の証拠です。しかし、天文学者たちは、惑星がガスの流れを引き起こしていると100%断言することはできません。たとえば、星の磁場もガスの乱れを引き起こす可能性があるからです。「現在は惑星の直接観測によってのみ、他の可能性を排除できます。しかし、今回捉えたガスの流れのパターンは独特であり、惑星だけがこの現象を引き起こす可能性が非常に高いといえます。」と、論文の共著者であるカーネギー科学研究所のジェイハン・ペ氏は語りました。ぺ氏は、円盤のコンピューターシミュレーションによってこの理論をテストしました。

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ガスの流れのパターンは独特で、円盤内の3ヵ所にある惑星が引き起こしている可能性が高いことがコンピューターシミュレーションによって示されました。星のまわりを周回する惑星は、ガスや塵を押しのけ、隙間を開けます。隙間の上層のガスは滝のように流れ込み、円盤内でガスの回転流を引き起こします。 図内の矢印はガスの流れ、縦の点線は円盤の隙間の位置、色はガスの密度(色が濃いほど密度が低い)を表しています。
Credit:ALMA(ESO / NAOJ / NRAO), J. Bae; NRAO / AUI / NSF, S. Dagnello.

今回の研究で予測された3つの惑星の位置は、昨年の結果に対応しています。これらの惑星の位置は、おそらく87au、140au、および237 auです [1] 。若い星HD 163296に最も近い惑星の質量は、木星の半分であると計算されます。中央の惑星は木星と同等の質量、最も遠い惑星は木星の2倍の質量があるとみられます。

原始惑星系円盤の表層から中層に向かうガスの流れは、1990年代後半から予測されてきました。しかし、天文学者がこの現象を観測したのは今回が初めてのことです。このようなガスの流れは、生まれたばかりの惑星を検出するのに役立つだけでなく、巨大なガス惑星がどのようにして大気を獲得するのかについての理解にもつながります。

「惑星は、円盤の中層で形成されます。この中層は、星の放射から保護された寒い場所です。」とティーグ氏は説明します。「この惑星によって引き起こされる隙間は、化学的に活性な円盤の表層からより温かいガスをもたらし、このガスが惑星の大気を形成するだろうと我々は考えているのです。」

ティーグ氏らの研究チームは、この現象を見ることができるとは思っていませんでした。「HD 163296のまわりの円盤は、アルマ望遠鏡で見ることができる最も明るくて大きい円盤です。」とティ-グ氏は言います。「しかし、このようなガスの流れが非常にはっきり見えたのは大きな驚きでした。円盤は、我々が思っていたよりもはるかに動的なもののようです。」

「この発見により、我々が予想していたよりもはるかに完全な惑星形成の全体像が得られました。」と論文の共著者であるミシガン大学のテッド・ベルギン氏は述べています。「このようなガスの流れを特徴づけることにより、どのようにして木星のような惑星が生まれるかを理解し、惑星誕生時の化学組成を明らかにすることができます。惑星は形成過程を通じて移動していますから、惑星誕生の場所を追跡するためにガスの流れを利用することができるかもしれません。」

論文・研究チーム
この研究は、R. Teague et al. ”Meridional flows in the disk around a young star”として、科学雑誌ネイチャーに掲載されています。(doi:10.1038/s41586-019-1642-0)

この研究を行った研究チームのメンバーは、以下の通りです。
Richard Teague (University of Michigan), Jaehan Bae (Carnegie Institution for Science), Edwin A. Bergin (University of Michigan)

[1]
天文単位–au–は、地球から太陽までの平均距離。

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