宇宙の渦構造によって成長する赤ちゃん星

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2019-11-21 国立天文台

天文学者たちはアルマ望遠鏡を用いて、赤ちゃん星を取り巻く降着円盤で二つの渦巻き腕を検出しました。今回の発見は、降着円盤 [1] を通じた赤ちゃん星の成長過程に関する現在の理論を裏付けるものであり、惑星形成プロセスに重要な洞察をもたらします。この結果は、台湾中央研究院天文及天文物理研究所のチンフェイ・リー氏が率いるチームが、専門誌「ネイチャー・アストロノミー」に発表しました。

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アルマ望遠鏡が撮影したHH 111の降着円盤
クレジット:ALMA(ESO / NAOJ / NRAO)/ Lee et al.

「高い解像度を誇るアルマ望遠鏡のおかげで、我々はついに赤ちゃん星を取り巻く若い降着円盤で二つの渦巻き腕を検出することに成功しました。この渦巻きは、長い間理論的に予測されていたもので、角運動量の輸送に重要な役割を果たします。この腕があることで、円盤内の物質が赤ちゃん星に向かってぐるぐると渦を巻いて落下して行けるのです。」と、リー氏は興奮気味に述べています。「今回の発見は、赤ちゃん星の成長過程を理解する上で大変重要なものといえます。」

やや成長した若い星の周りの原始惑星系円盤で検出される渦は、円盤の中に作られた見えない原始惑星との相互作用によって形成されます。それとは異なり、今回の二つの渦巻き腕は、周囲の分子雲から円盤へガスや塵が降着することによって引き起こされます。

この降着円盤を伴う赤ちゃん星は、オリオン座の方向、地球から1300光年先に位置しており、HH 111と名付けられた超音速ジェットの中心にあります。赤ちゃん星は約50万歳、太陽の年齢(46億歳)のわずか1万分の1です。質量は、太陽の約1.5倍です。

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(上)ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたHH 111原始星系の超音速ジェットの光学画像(Reipurth et al。1999)。
(左下)アルマ望遠鏡によって検出された降着円盤。
(下中央)円盤が正面を向くように回転させた画像。かすかな二つの渦が確認できます。
(右下)円盤内のかすかな螺旋を強調するために、滑らかに広がる円盤状構造を元データから差し引いた画像。
クレジット:ALMA(ESO / NAOJ / NRAO)/ Lee et al.

赤ちゃん星の重力に引かれて落下してくるガスの一部が、磁場の力などによって赤ちゃん星の近くから吹き上げられ、壮大なジェットを作ります。過去に行われた解像度120 au(天文単位auは地球から太陽までの平均距離)の観測では、赤ちゃん星を中心にした半径160 auの降着円盤が検出されました。最新のアルマ望遠鏡による観測は解像度16 auで行われ、約8倍も精度が向上しています。この優れた観測精度により、研究チームは円盤を空間的に分解して観測することができたのです。研究チームが検出した渦巻腕は、円盤に集積した塵粒子が出す熱放射によって輝いていました。

高い解像度を誇るアルマ望遠鏡を用いた研究によって、赤ちゃん星を取り巻く降着円盤で渦の検出が可能になりました。これにより、降着円盤を通したガスの移動メカニズムの研究が進展すると見込まれます。このような観測は、活動銀河の中心にある超大質量ブラックホールなど、他の天体を取り巻く降着円盤についての洞察を深めるものといえます。
論文・研究チーム
この観測成果は、Lee et al. “Spiral Structures in an Embedded Protostellar Disk Driven by Envelope Accretion” として、天文学専門誌「ネイチャー・アストロノミー」に掲載されました。

本研究チームのメンバーは、以下の通りです。
Chin-Fei Lee(台湾中央研究院天文及天文物理研究所/台湾国立大学)、Zhi-Yun Li(米国バージニア大学)、Neal J. Tuener(米国ジェット推進研究所/カリフォルニア工科大学)

[1]
降着円盤とは、天体の重力によってガスや塵が集められることで、その天体の周りに形成される円盤のこと。

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