既存トラックに自動運転ユニットを後付け,車両運転操作の自動化を実現
2021-08-03 株式会社IHI
株式会社IHI(所在地:東京都江東区,社長:井手 博,以下「IHI」)とグループ会社である株式会社IHI物流産業システム(所在地:東京都江東区,社長:笠 俊司,以下「ILM」)はこのたび,既存の構内搬送車両に自動運転ユニットを後付けすることで,工場構内における貨物を自動搬送するシステム(以下,本システム)を開発しました。
<自動運転ユニット>
アクチュエーター(物理制御機構)
バイワイヤ(電子制御機構)
製造業における工場では,入出荷・保管・製造の各工程作業場所が離れており,トラックやトレーラーによって貨物のピストン搬送が行われています。しかし,ドライバーの高齢化や不足による労働環境の改善と人材確保が課題となり,自動搬送のニーズが高まっています。自動車メーカーを中心に自動運転車両の開発が進められていますが,搬送車両の特殊性や車両入れ替えに伴う大型投資が必要となることから,自動運転車両の導入は進んでいません。IHIとILMは,このようなニーズに対応するため,既存の搬送車両に本システムを活用することで,構内での自動搬送を可能とする技術を開発しました。
本システムは,車両内部に制御装置と操作装置を設置することで,アクセル・ブレーキ・ハンドルを操作し,車両運転を自動化できる点が特徴です。また,車両の位置や速度を把握するセンサーや障害物を検知するセンサーで,屋外だけではなく屋内を含む事前に設定したルートに沿って,障害物との衝突を未然に防止しながら自動走行します。
IHIとILMは現在,本システムの試験をパートナー企業と共同で実施しています。本システムの機能性能確認のほか,安全確保に関する技術や知見を蓄積し,2022年度の実用化を目指して取組みを進めていきます。
また,今後本システムの実用化・導入に合わせ,構内の道路環境と車両運行ルールに対するリスク分析などのコンサルティングや,お客さまの要望に応じた,製造工程全体における自動化システムも含めたトータルエンジニアリングを提供していきます。
本システムを含めた様々な自動化・省人化設備のラインアップにより,お客さまの課題を解決するソリューションを提供し,社会の発展へ貢献していきます。
<詳細特長>
- 地上側管制室から,制御装置に無線通信で指示することで,車両が運行を開始します。運行中はセンサーで収集した車両の位置・速度などの情報をもとに,制御装置がアクチュエーター(物理制御機構)とバイワイヤ(電子制御機構)を活用した操作装置に指示を出すことで,アクセル・ブレーキ・ハンドルの運転操作を制御します。
- 車両の位置や速度を把握するセンサーとして,衛星電波を利用するGNSS※を利用します。また,建造物等により電波が受信できない,もしくは不安定な環境の場合は,LiDAR※センサーの計測データと事前に取得した3次元地図データを照合することで,地図上の位置や速度を推定し,屋内外での自動走行を可能にします。搭載するセンサーは,走行する環境に応じて選定します。
※GNSS:Global Navigation Satellite System(衛星測位システム)の略称。
複数の測位衛星から受信した電波をもとに,衛星との距離を割り出す
ことで,現在位置を計測するシステム。
※LiDAR:Light Detection And Ranging(光による検知と測距)の略称。
レーザ光を常時照射し,対象物が反射した光をもとに,対象物までの
距離や位置を計測するシステム。
<システムイメージ図>
<参考画像>
本システムを搭載した既存トラック(車両位置センサーとしてGNSSセンサーを搭載)
トラック上方部のセンサー(車両位置センサーとしてGNSSとLiDARセンサーを搭載)
LiDARセンシング画像