2020-09-08 京都大学
木本恒暢 工学研究科教授、立木馨大 同博士課程学生らの研究グループは、省エネの切り札と言われるSiC(シリコンカーバイド)半導体で20年間、問題になっていた欠陥(半導体の不完全性)を環境に優しい手法で大幅に低減し、SiCトランジスタの性能を2倍に向上することに成功しました。
Si(シリコン)を中心とした半導体は、計算機のロジックやメモリだけでなく、電気自動車、電車のモータ制御、電源などに広く用いられていますが、消費電力(電力損失)が大きな問題となっています。近年、低損失化を目指して、Siよりも性質の優れたSiCによるトランジスタ開発が活発になり、実用化が始まりました。
しかしSiCトランジスタの心臓部となる酸化膜とSiCの境界部分(界面)に多くの欠陥が存在し、SiC本来の性能を全く発揮できない状況が20年続いていました。また、従来はこの欠陥を低減するために猛毒ガス(一酸化窒素)を使う必要がありました。本研究グループは、欠陥の主要因を突き止め、さらに窒素という大気中に存在する安全なガスを用いることによって、現在の世界標準に比べて2倍という最高の特性を達成しました。今回の技術により、普及が進む電気自動車や産業機器などへの、低損失SiCデバイス適用が急速に拡大し、エネルギー問題にも大きく貢献することが期待されます。
本研究成果は、2020年9月10日に、第81回応用物理学会秋季学術講演会で発表されます。
図:窒素ガスを用いたSiO2/SiCトランジスタの性能向上