燃料アンモニアによる船舶のゼロエミッション化実現に向けた世界初の取り組み
2020-09-03 日本郵船株式会社,株式会社IHI原動機,日本海事協会
8月18日、日本郵船株式会社(以下「日本郵船」)、株式会社IHI原動機(以下「IHI原動機」)、一般財団法人日本海事協会(以下「日本海事協会」)の3社は、世界初のアンモニア燃料タグボートの実用化に向け、共同研究開発契約を締結しました。
1. 背景
2016年のパリ協定発効を機に、脱炭素化の世界的な機運が高まると共に、海運分野でも温室効果ガス(GHG)の排出削減が課題となっています。2018年には、国際海事機関(IMO)が、国際海運分野からのGHG 排出量を2050年までに半減させ、今世紀中の早期にゼロとする目標を掲げました。アンモニアは燃焼しても二酸化炭素(CO₂)を排出しないため、地球温暖化対策に貢献する次世代燃料として期待されており、さらにアンモニアの原料となる水素にCO₂フリー水素(注1)を活用することでゼロエミッション化の実現が可能と言われています。そこでこのたび、3社でアンモニア燃料タグボートの共同研究開発に着手する運びとなりました。
3社は2015年に竣工した日本初の液化天然ガス(LNG)燃料船であるタグボート「魁(さきがけ)」(注2)の共同開発メンバーです。本共同研究開発では「魁」の開発・建造・運航で培った知見を活用します。
2.共同研究開発の概要
本共同研究開発ではタグボートへのアンモニアの舶用燃料導入に関して技術と運航の両面から研究開発を進めます。具体的に2020年度は、船体、機関、燃料供給システムを含む技術開発、安心安全な運航手法の開発といったテーマに取り組みます。その後、それら研究開発の成果に基づく実用性評価を踏まえて、アンモニア燃料タグボート建造に関する検討に着手し、建造検討の目途を付ける予定です。
本共同研究開発に関する各社の取組みは以下のとおりです。
【共同研究開発に関する各社の取組み】
日本郵船
船体及び燃料供給システムの研究・設計
「魁」の運航経験も踏まえた運航手法の検証
IHI原動機
機関及び排ガス後処理装置の研究・設計
日本海事協会
アンモニア燃料タグボートの安全性評価
アンモニア燃料タグボート外観イメージ図
3.今後の展望
アンモニアの舶用燃料導入は海運分野の脱炭素化に向けた現実的な解決策として大きく期待されています。本共同研究開発は、高出力が求められるタグボートにアンモニア舶用燃料を実装することを構想しており、そのために必要とされる技術・運航の要件を固めていきます。次世代燃料の候補の一つであるアンモニアを用いた舶用機器の実用化及び本船運航の手法を確立する事が出来れば、日本の海事産業として国際海運の脱炭素化に大きく貢献することが期待できます。
(注1)フリー水素
CO₂を発生することなく生成した水素。CO₂フリー水素を生成する方法として、再生可能エネルギー(太陽光・風力・地熱等)を活用して水素を製造する方法や、化石燃料(天然ガス・石炭等)を活用し、発生したCO₂を回収・貯蔵して水素を製造する方法などがあります。上記の方法により生成された水素を原料とするアンモニアはCO₂フリーアンモニアとされ、燃料や水素のエネルギーキャリアとしての活用が期待されています。
(注2)「魁(さきがけ)」
「魁」は日本郵船が保有し、㈱新日本海洋社による管理の下、横浜・川崎で運航されています。IHI原動機(*開発当時は新潟原動機株式会社)が開発製造したLNGとA重油の双方を燃料として使用できる「Dual Fuelエンジン」を搭載し、京浜ドック㈱で建造された日本初のLNG燃料タグボートです。
LNG 燃料使用時には重油使用時と比較し硫黄酸化物(SOx)排出量を約100%、窒素酸化物(NOx)排出量を約80%、二酸化炭素(CO₂)排出量を約30%削減することができる、環境配慮型のタグボートです。
各社概要:
<日本郵船株式会社>
本社:東京都千代田区
代表者:代表取締役社長 長澤仁志
<株式会社IHI原動機>
本社:東京都千代田区
代表者:代表取締役社長 矢矧浩二
<一般財団法人日本海事協会>
本社:東京都千代田区
代表者:代表理事会長 坂下広朗
この件に関するお問い合わせ先:
日本郵船株式会社 広報グループ 報道チーム 担当 三澤
株式会社IHI 広報・IR部 担当 本田
一般財団法人日本海事協会 広報室