2023-05-25 京都大学
計算と実験を融合する合金設計法の概要。理論計算で得られた強度・延性影響の物性パラメーターと合金組成との関係が状態図上に等高線図として示されています。実験で測定した合金の強度・延性の結果(中央の図)と照らし合わせ、高強度高延性の合金組成を導き出すことができます。
近年、多種類の元素を高濃度に混合する「高エントロピー合金」の概念が提案され、従来の合金に見られない特異で優れた力学特性を発現しています。中でも、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルがそれぞれ20%ずつ含まれる等原子量高エントロピー合金(CrMnFeCoNi 合金)およびその派生合金は、室温でこの合金を構成する純金属元素(例えばニッケル)の10 倍以上もの高強度と破断伸びが100%を上回るほど優れた延性を示し、高強度高延性を具備した次世代の構造材料の候補と期待されています。しかし、CrMnFeCoNi 合金が示す高強度・高延性はどのような材料パラメーターに起因するのかは完全には解明されておらず、より高い強度・延性を得るための合金設計指針の確立が待ち望まれています。
材料工学専攻の陳正昊 助教、乾晴行 教授らのグループ及びドイツのカルスルーエ工業大学のM.Heilmaier 教授はCrMnFeCoNi 派生合金系の一つであり派生合金の中では最も高い強度・延性を示すCrCoNi 合金系に着目し、合金組成と材料の強度・延性との関係およびその材料特性を支配する材料パラメーターを解明し、新規な高強度高延性合金の開発に成功するとともに計算と実験の融合による新たな合金設計法の確立に成功しました。
本成果は、2023 年5 月12 日に国際学術誌「Journal of Alloys and Compounds」にオンライン掲載されました。
研究詳細
新規高強度高延性合金の開発に成功―計算と実験の融合による合金設計法の確立―
研究者情報
陳正昊
乾晴行
書誌情報
タイトル:A new route to achieve high strength and high ductility compositions in Cr-Co-Ni-based medium-entropy alloy: A predictive model connecting theoretical calculations and experimental measurements
(高強度高延性のCrCoNi 中エントロピー合金の合金設計計算と実験を融合した新規な設計手法)
著者:Z. Wang, L. Le, Z. Chen, K. Yuge, K. Kishida, H. Inui, M. Heilmaier
掲載誌:Journal of alloys and compounds
DOI:10.1016/j.jallcom.2023.170555