2023-02-09 ノースカロライナ州立大学(NCState)
◆この研究では、反強誘電体材料に注目しました。この材料は結晶構造をとっており、規則正しく繰り返される単位から構成されている。結晶構造の各繰り返し単位は、正の電荷と負の電荷が対になった「双極子」を持っている。反強誘電体の特徴は、この双極子が構造中のユニットからユニットへと交互に配置されていることである。双極子が規則正しく並んでいることは、マクロスケールで見ると、反強誘電体には正負の分極がないことも意味している。
◆強誘電体も結晶構造を持っている。しかし、強誘電体では、繰り返し単位の双極子がすべて同じ方向を向いている。しかも、強誘電体の双極子は、電界をかけると分極を反転させることができる。
◆研究者らは、反強誘電体の特性が小さなスケールでどのように変化するかを調べるため、鉛フリーのニオブ酸ナトリウム(NaNbO3)膜に注目した。
◆反強誘電体薄膜は、基板上に成長させたものである。反強誘電体薄膜のサイズに関連する潜在的な効果を評価するこれまでの試みは、薄膜がまだ基板層に付着している状態で、その薄膜を観察していた。なぜなら、薄膜が基板と強く結合している部分には「ひずみ」があり、薄膜のサイズに関係する効果と基板に関係するひずみによる効果を評価することが難しいからです。
◆「この課題を解決するために、反強誘電体薄膜と基板の間に犠牲バッファー層を導入しました」とXuは言う。「薄膜を目的の厚さに成長させた後、この犠牲層を選択的にエッチングしました。これにより、薄膜を基板から剥がすことができました。最終的には、基板が変化に寄与していないことがわかったので、薄膜の変化がそのサイズにどのように影響されるかを明らかにすることができました」。
◆研究者達は、その後、様々な実験的・理論的アプローチを用いて、9ナノメートル(nm)から164nmの厚さのこれらの無歪サンプルを評価しました。
◆「私たちは、NaNbO3膜が40 nmより薄くなると、完全に強誘電体になることを見いだしました。また、40 nmから164 nmの範囲では、強誘電体の領域と反強誘電体の領域があることがわかりました」。
◆「私たちが発見した興味深いことの1つは、薄膜が強誘電体と反強誘電体の両方の領域をもつ領域にあるとき、電界をかけることで反強誘電体の領域を強誘電体にできることです」とXu教授は言う。「しかも、この変化は可逆的ではありません。言い換えれば、164 nmまでの厚さの薄膜を完全に強誘電体にすることができたのです」。
◆「第一原理に基づいて、極めて薄い反強誘電体材料に見られる相変化は、膜表面から始まる構造歪みによって駆動されていると結論づけることができました」とXuは言う。つまり、表面での不安定性が材料全体に波及するのです。これは、材料の体積が大きいときには不可能なことです。これが、反強誘電体がより大きなスケールで強誘電体になるのを阻んでいるのです」。
◆「しかし、サイズ効果を利用して材料の特性を制御する方法について、重要な知見を得ることができました。「我々は、NaNbO3における顕著なサイズ効果を実証しました。この効果を明らかにするために使用した技術は、他の様々な材料についても同様の問題を探求するために使用することができます。
◆論文は、Advanced Materials誌にオープンアクセスで掲載されています。
<関連情報>
- https://news.ncsu.edu/2023/02/antiferroelectrics-become-ferroelectric/
- https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adma.202210562
反強誘電性酸化物膜のサイズ依存性強誘電性 Size-Induced Ferroelectricity in Antiferroelectric Oxide Membranes
Ruijuan Xu, Kevin J. Crust, Varun Harbola, Rémi Arras, Kinnary Y. Patel, Sergey Prosandeev, Hui Cao, Yu-Tsun Shao, Piush Behera, Lucas Caretta, Woo Jin Kim, Aarushi Khandelwal, Megha Acharya, Melody M. Wang, Yin Liu, Edward S. Barnard, Archana Raja, Lane W. Martin, X. Wendy Gu, Hua Zhou, Ramamoorthy Ramesh, David A. Muller, Laurent Bellaiche, Harold Y. Hwang
Advanced Materials Published: 04 February 2023
DOI:https://doi.org/10.1002/adma.202210562
Abstract
Despite extensive studies on size effects in ferroelectrics, how structures and properties evolve in antiferroelectrics with reduced dimensions still remains elusive. Given the enormous potential of utilizing antiferroelectrics for high energy-density storage applications, understanding their size effects would provide key information for optimizing device performances at small scales. Here, we investigate the fundamental intrinsic size dependence of antiferroelectricity in lead-free NaNbO3 membranes. Via a wide range of experimental and theoretical approaches, we probe an intriguing antiferroelectric-to-ferroelectric transition upon reducing membrane thickness. This size effect leads to a ferroelectric single-phase below 40 nm as well as a mixed-phase state with ferroelectric and antiferroelectric orders coexisting above this critical thickness. Furthermore, we show that the antiferroelectric and ferroelectric orders are electrically switchable. First-principle calculations further reveal the observed transition is driven by the structural distortion arising from the membrane surface. Our work provides direct experimental evidence for intrinsic size-driven scaling in antiferroelectrics and demonstrates enormous potential of utilizing size effects to drive emergent properties in environmentally benign lead-free oxides with the membrane platform.