毒性ガス二硫化炭素の選択的・超高速発光検出を達成~環境・健康問題を見据えた高感度ケミカルセンサーの応用に期待~

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2024-12-20 東北大学

金属材料研究所 助教 芳野遼
金属材料研究所 教授 宮坂等

【発表のポイント】

  • 環境・人体に有害な毒性物質である二硫化炭素(CS2(注1)を選択的に吸着し、10秒以下という高速で発光(注2)検出可能な多孔性の分子格子(注3)を開発しました。
  • CS2 吸着/脱着のサイクル実験から可逆的な発光の ON-OFF スイッチングが観測され、優れたリサイクル性が実証されました。
  • 発光検出技術を用いたケミカルセンサーへの応用展開が期待されます。

【概要】

我々の生活には多くの危険物質が多く存在し、特にほとんどの毒性ガスは目視では認識できないため、これらを効率良く選択的に捕捉し、さらに簡便かつ高感度に検出可能な技術開発は環境・健康問題の観点から重要な課題です。

東北大学金属材料研究所の芳野遼 助教と宮坂等 教授の研究グループは、九州大学大学院理学研究院の恩田健 教授、名古屋大学未来社会創造機構の土方優 特任准教授、京都大学高等研究院物質―細胞統合システム拠点(iCeMS)の北川進 特別教授らとの共同研究により、工業製品や医薬品生産に必要でありながらも工場周辺の環境や生産現場での人体に対して危険性の高い二硫化炭素(CS2)を高感度に検出可能な材料開発に成功しました。

本研究で合成した多孔性の金属-有機構造体(Metal-Organic Framework:MOF)は身の回りに存在する水や二酸化炭素などは吸着せず、CS2 のみを選択的に吸着する「特異な分子ふるい」として機能します。さらに、CS2 の検出時間は10秒以下と高速な発光応答を示したため、発光を利用した高感度ケミカルセンサーへの展開が期待されます。

本研究成果は、2024年12月17日付(現地時間)でドイツ化学会誌Angewandte Chemie International Edition にオンライン掲載されました。

毒性ガス二硫化炭素の選択的・超高速発光検出を達成~環境・健康問題を見据えた高感度ケミカルセンサーの応用に期待~
図1. 金属イオン(Zn2+)と配位子(ピラジン、[Au(CN)2])から構築される発光性 MOF の知恵の輪(相互貫入型)構造 (左)・紫外光励起下での発光スペクトル (右)

【用語解説】

注1. 二硫化炭素
無色で揮発性の直線系分子で、化学式はCS2

注2. 発光
光吸収の結果生じる電子励起状態から基底状態に戻る際に発生するエネルギーの一部が光として放出される現象。

注3. 多孔性の分子格子
ゼオライトや活性炭、シリカゲルのような無機物で構成される従来の多孔性材料に対し、金属イオンと有機配位子から成る多孔性材料は金属−有機構造体(Metal−Organic Framework; MOF)や多孔性配位高分子(Porous Coordination Polymer; PCP)と呼称されます。

【論文情報】

タイトル:Ultrafast Luminescence Detection with Selective Adsorption of Carbon Disulfide in a Gold(I) Metal−Organic Framework
著者: Haruka Yoshino*, Masaki Saigo, Takumi Ehara, Kiyoshi Miyata, Ken Onda, Jenny Pirillo, Yuh Hijikata, Shinya Takaishi, Wataru Kosaka, Ken-ichi Otake, Susumu Kitagawa, and Hitoshi Miyasaka*
*責任著者:東北大学金属材料研究所 助教 芳野 遼
東北大学金属材料研究所 教授 宮坂 等
掲載誌:Angewandte Chemie International Edition
DOI:10.1002/anie.202413830

詳細(プレスリリース本文)

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学金属材料研究所 錯体物性化学研究部門
助教 芳野 遼(ヨシノ ハルカ)

東北大学金属材料研究所 錯体物性化学研究部門
教授 宮坂 等(ミヤサカ ヒトシ)

(報道に関すること)
東北大学金属材料研究所 情報企画室広報班
東北大学大学院理学研究科 広報・アウトリーチ支援室

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