2024-12-10 地震調査研究推進本部地震調査委員会
1.主な地震活動
〇 11 月 26 日に石川県西方沖の深さ約 10km でマグニチュード(M)6.6 の地震が発生した。この地震により石川県で最大震度5弱を観測し、負傷者が出るなど被害を生じた。また、この地震により石川県で長周期地震動階級2を観測した。
2.各領域別の地震活動
(1)北海道地方
目立った活動はなかった。
(2)東北地方
〇 11 月 16 日に陸奥湾の深さ約 10km で M4.6 の地震が発生した。また、この地震の震源付近では、20 日に M5.1 の地震が発生した。これらの地震の発震機構は東北東-西南西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。今回の地震の震央付近では、これらの地震を含め、11 月 16 日から 30 日までに震度1以上を観測した地震が9回発生するなど、地震活動が活発であった。
○ 11 月 24 日に岩手県沖の深さ約 40km で M5.0 の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
○ 11 月 26 日に宮城県沖の深さ約 40km で M5.4 の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
(3)関東・中部地方
○ 11 月 26 日に石川県西方沖の深さ約 10km で M6.6 の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。この地震は、1月1日に石川県能登地方で発生した M7.6 の地震後の地震活動域の西端で発生した。この地震の発生後、28 日に M4.7 の地震が発生するなど、南北方向に約 20km の範囲で地震活動が活発である。11 月 26 日から 30 日までに震度1以上を観測した地震は 123 回(震度5弱:1回、震度4:1回、震度3:5回)である。この地震の震源付近では、1月1日に石川県能登地方で発生した M7.6 の地震以降、1月3日、2月1日及び2月5日に M4.0 の地震、10 月8日に M3.8 の地震が発生するなど、地震活動が時々見られていた。この地震に伴い、能登半島周辺で西方向に1㎝程度の地殻変動を観測している。26 日の地震の地震活動域の周辺には、羽咋沖西(はくいおきにし)断層などが存在している。
1月1日の M7.6 の地震の地震活動域では、26 日の地震活動域以外で、全体として地震活動が低下してきているものの、2020 年 12 月から活発になった地震活動は依然として継続している。26 日の地震活動以外の 11 月 1 日から 11 月 30 日までに震度1以上を観測した地震は 13 回発生している。なお、10 月中に震度1 以上を観測した地震は 14 回(石川県西方沖で4回)であった。
GNSS観測によると、1月1日の M7.6 の地震の後、およそ 11 か月間に珠洲(すず)観測点で北西方向に約5cm の水平変動など、能登半島を中心に富山県や新潟県、長野県など広い範囲で1cm を超える水平変動、輪島観測点で約8cm の沈降が観測されるなど、余効変動と考えられる地殻変動が観測されている。石川県能登地方の地殻内では 2018 年頃から地震回数が増加傾向にあり、2020 年 12 月から地震活動が活発になり、2022 年6月には M5.4、2023 年5月には M6.5、 2024 年1月には M7.6、6月には M6.0、11 月には M6.6 の地震が発生した。26 日に発生した M6.6 の地震は 2020 年から継続している地震活動の中で2番目の規模であった。一連の地震活動において、2020 年 12 月1日から 2024 年 11 月 30 日までに震度1以上を観測する地震が 2592 回発生した。また、2020 年 12 月頃から地殻変動も観測されていた。
また、2024 年と 2010 年に調査された富山湾の海底地形を比較した結果、富山市沖の海底谷以外にも、高岡市伏木沖の海底谷の斜面が、南北約3km、東西約 0.5km にわたって崩れ、最大 10m 程度深くなっていることが確認された。M7.6 の地震発生の2分後に伏木検潮所で観測された津波と関係した可能性がある。
これまでの地震活動及び地殻変動の状況を踏まえると、2020 年 12 月以降の一連の地震活動は当分続くと考えられ、M7.6 の地震後の活動域及びその周辺では、今後強い揺れや津波を伴う地震発生の可能性がある。
○ 11 月7日に硫黄島近海の深さ約 10km(CMT 解による)で M6.3 の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。この地震の震源付近では、8月からまとまった地震活動がみられ、11 月には M5.0 以上の地震が 18 回発生するなど地震活動が活発であった。
(4)近畿・中国・四国地方
目立った活動はなかった。
(5)九州・沖縄地方
○ 11 月 17 日に奄美大島北東沖の深さ約 30km(CMT 解による)で M5.9 の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に張力軸を持つ型で、フィリピン海プレート内部で発生した地震である。
○ 11 月 30 日に宮古島近海の深さ約 40km(CMT 解による)で M5.8 の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東-西南西方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。
(6)南海トラフ周辺
○ 南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていない。
(7)その他の地域
○ 11 月 11 日にマリアナ諸島の深さ約 10km(CMT 解による)で M6.0 の地震が発生した。この地震の発震機構は北東-南西方向に圧力軸を持つ型で、フィリピン海プレート内で発生した地震である。
注:GNSSとは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称である。