2024-11-28 三菱重工
◆ 米国の世界的水素燃料大手FEF社で実際の水素ステーションと同等環境下の供給施設により検証
◆ ポンプの起動・停止を1,500回実施、極低温下で使う主要部品は劣化交換なしで運転を終了
FEF社リバモア水素供給施設
三菱重工業は、水素ステーション向けの90MPa級超高圧液体水素昇圧ポンプ(注1)に対する長期耐久性試験(以下、本試験)において、累計1,200時間の運転を達成しました。超高圧液体水素昇圧ポンプは、燃料電池自動車に燃料となる水素を補給するもので、吐出圧力90MPaで1時間当たり160kgの大流量運転を継続的かつ安定的に達成するため、高い耐久性が求められます。本試験結果は、水素エネルギーを本格的に利活用する「水素社会」の実現に向け大きな前進をもたらすこととなりました。
本試験は、水素燃料供給の世界的大手である米国ファーストエレメント・フュエル社(FirstElement Fuel,Inc.、本社:カリフォルニア州、以下FEF社)の保有するリバモア水素供給施設において、実際の水素ステーションと同等環境の下で実施(注2)してきました。
本試験は、2023年4月に開始。2024年11月の累計1,200時間達成までに、ポンプの起動・停止を約1,500回実施しています。また、燃料電池(FC)バスに換算して約5,000台分(注3)に相当する、約140トンの液体水素を充填しました。
当社の昇圧ポンプは、液体水素の極低温下(約-253℃)で使用される主要部品について、試験中は劣化による交換なしで1,200時間の運転を達成。液体水素昇圧ポンプとしての長期信頼性を実証できました。さらに、ポンプ運転中のBoil Off Gasの発生による水素損失が実質ゼロであったことが確認できています。これにより、水素ステーションの運営における経済性向上に貢献できることを証明しました。
この液体水素昇圧ポンプは、日本国内に設置される商用モビリティ用の大規模水素ステーションに納入される予定。2025年4月の同ステーション開所と同時に、当社製の液体水素昇圧ポンプが商用機として初めて運用される見込みです。
三菱重工は、90MPa級超高圧液体水素昇圧ポンプを順次世界市場に提供するとともに、水素社会の実現に向けた新たなソリューションとなる製品開発に努めることで、グローバル社会のカーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
(注1)液体水素昇圧ポンプは、水素を液体状態で昇圧することによって、気体の水素を昇圧する方式に比べて、エネルギー消費量を約4分の1に抑えることができ、水素社会における環境負荷低減に貢献します。三菱重工は、ロケット用液体酸素・液体水素エンジン等で培った極低温技術に加え、原子力発電所向けをはじめとする各種産業用ポンプの納入実績で培った技術と経験の下、同ポンプを開発し、2023年より市場投入しています。詳しくは以下URLをご覧下さい。
三菱重工 | 水素ステーション向けの超高圧液体水素昇圧ポンプを開発 極低温試験設備における液体水素の90MPa昇圧に成功(mhi.com)
三菱重工 | 水素ステーション向け90MPa級超高圧液体水素昇圧ポンプの長期耐久性を確認 水素社会実現の新ソリューションとして液体水素昇圧ポンプを市場投入(mhi.com)
(注2)三菱重工は液体水素を使った実際の水素ステーションと同様の運転環境で実施することを重要視し、カリフォルニア州リバモアのFEF社の水素供給施設にて実証試験を実施しています。
(注3)FCバス1台当たりの液体水素充填量を28kgと想定した場合。
ポンプイメージ