2024-09-25 新エネルギー・産業技術総合開発機構,大崎クールジェン株式会社
NEDOと大崎クールジェン株式会社は、世界初となる「CO2分離・回収型IGCCにおけるバイオマス混合ガス化技術開発」(以下、本事業)における実証試験を2024年9月21日に開始しました。
二酸化炭素(CO2)分離・回収設備を備えた石炭ガス化複合発電(IGCC)にバイオマス燃料を混合するのは世界初であり、CO2貯留・利用技術との組み合わせにより可能となるカーボンニュートラルを目指します。
本事業では、実証試験を通して得られた成果をバイオマス混合ガス化技術の社会実装につなげることを目的としており、バイオマス燃料を大規模に導入した場合のプラント全体に与える影響を確認検証し、CO2分離・回収型酸素吹IGCCにおけるバイオマス燃料の適応可能性について実証します。
1.背景
NEDOと大崎クールジェンは、これまでに高効率石炭火力発電技術開発に加え、CO2分離・回収技術を組み合わせたCO2分離・回収型酸素吹IGCC※1の実証試験を実施しており、CO2回収率90%以上を達成※2しています。一方、2050年カーボンニュートラルに向けた長期展望においては、石炭火力発電におけるCO2排出量の課題を克服していくことが一層重要となっており、さらなるCO2排出量削減を目指す技術開発が求められています※3。
そのため、2023年度よりCO2排出量削減に向けた新たな取り組みとして、本事業※4を進めてきました。バイオマス燃料はカーボンニュートラルな燃料であり、バイオマス燃料混合率10%を超えるバイオマス混合ガス化技術をCO2分離・回収型酸素吹IGCCにおいて確立すれば、回収率90%以上のCO2分離・回収技術とCO2貯留・利用技術との組み合わせにより、カーボンニュートラルを実現することが可能となります。
2.実証試験の概要
本事業では、CO2分離・回収型酸素吹IGCCにバイオマス燃料を大規模導入した場合のプラント全体に与える影響を実用化研究として確認検証し、適応可能性について実証することを目的としています。しかしながら、CO2分離・回収型酸素吹IGCCにバイオマス燃料を混合した実績は世界的にも例がなく、各プロセスにおける技術課題の解決が必要となります。また、バイオマス混合ガス化技術を確立・社会実装するためには実機規模での実証が不可欠になります。
そのため、バイオマス燃料導入による各設備への影響評価および、課題抽出と課題解決を2023年度の要素研究にて実施しました。これらの成果をもって、CO2分離・回収型酸素吹IGCCにおいてカーボンニュートラルを目指すべく、バイオマス混合ガス化の実証試験を2024年9月21日に開始しました。
表1 本事業の概要
項目 | 実施内容 |
---|---|
CO2分離・回収型酸素吹IGCCへのバイオマス燃料大規模導入実証 | CO2分離・回収型酸素吹IGCCにバイオマス燃料を大規模に導入した際のシステム全体への影響について評価し、「CO2分離・回収型酸素吹IGCCにおけるバイオマス混合ガス化の最適システム検討」につなげる。 |
CO2分離・回収型酸素吹IGCCにおけるバイオマス混合ガス化の最適システム検討 | 要素研究で得られた結果を反映して、CO2分離・回収型酸素吹IGCCにおいて、バイオマス混合比率50%のバイオマス混合ガス化を達成するための商用機を見据えた最適なシステムの見通しを得る。 |
IGCCにおけるバイオマス燃料の適応可能性評価 | CO2分離・回収型酸素吹IGCCにおけるバイオマス燃料の導入について、バイオマス燃料の適応可能性について評価する。 |
3.今後の予定
NEDOと大崎クールジェンは実証試験を通して得られた成果にてバイオマス混合ガス化技術の社会実装へつなげていきます。さらに、本事業にて分離・回収したCO2の一部を隣接するカーボンリサイクル実証研究拠点※5へ供給することにより、カーボンリサイクル技術開発にも貢献していきます。
図 実証試験プラント全景(広島県豊田郡大崎上島町、中国電力(株)大崎発電所内)
【注釈】
- ※1 IGCC
- IGCCはIntegrated coal Gasification Combined Cycleの略称で、石炭をガス化し、蒸気タービンとガスタービンを組み合わせたことによる、従来型石炭火力に比べ高効率化な発電システムです。
- ※2 CO2回収率90%以上を達成
-
- 事業名:カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業/CO2分離・回収型酸素吹IGCC実証
- 事業期間:2016年度~2022年度
- 成果概要:「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/〔1〕石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業(6.0MB)」
- ※3 さらなるCO2排出量削減を目指す技術開発が求められています。
- 2021年10月策定の「第6次エネルギー基本計画」において、2050年カーボンニュートラルに向けた長期展望と、それを踏まえた2030年に向けた政策対応について記述されており、石炭火力は、再生可能エネルギーを最大限導入する中で、調整電源としての役割が期待されるが、電源構成における比率は、安定供給の確保を大前提に低減させる一方で、脱炭素化を見据えつつ、次世代の高効率石炭火力発電技術である石炭ガス化複合発電(IGCC)や石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)などの技術開発等を推進することが盛り込まれています。
- ※4 本事業
- 「CO2分離・回収型IGCCにおけるバイオマス混合ガス化技術開発」では、要素研究(委託事業)と実用化研究(助成事業)を行っています。
- 事業名:カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業/CO2分離・回収型IGCCにおけるバイオマス混合ガス化技術開発/要素研究
- 事業期間:2023年度~2024年度
- 事業概要:「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業/CO2分離・回収型IGCCにおけるバイオマス混合ガス化技術開発」
- 事業名:カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業/CO2分離・回収型IGCCにおけるバイオマス混合ガス化技術開発/実用化研究
- 事業期間:2023年度~2024年度
- 事業概要:「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業/CO2分離・回収型IGCCにおけるバイオマス混合ガス化技術開発」
- ※5 カーボンリサイクル実証研究拠点
- NEDO事業「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2有効利用拠点における技術開発」を行っています。
- 事業名:カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2有効利用拠点における技術開発
- 事業期間:2020年度~2024年度
- 事業概要:カーボンリサイクル実証研究拠点
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO サーキュラーエコノミー部 火力・製鉄チーム
大崎クールジェン 総務企画部 担当:下山、山崎
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 経営企画部 広報企画・報道課