2024-07-09 愛媛大学
蛇紋石(アンチゴライト)は含水鉱物であり、地球内部への水の重要な運搬役として、また深度約200kmまでの地震発生トリガーとして知られています。しかし、その結晶構造は複雑であり、温度や圧力条件によってポリソームと呼ばれる構造・組成的変調を生じることが示唆されています。しかし地球内部の高温高圧下で、アンチゴライトのどのポリソームが安定であるか、あるいは支配的であるかはよくわかっていません。本研究では、アンチゴライトのいくつかのポリソームを第一原理計算により計算し、それらのエンタルピー(静的0Kにおける系のギブス自由エネルギー)を比較することにより、圧力の関数として安定な構造を決定しました。その結果、アンチゴライトの構造と化学組成は高圧下で変化し、沈み込む過程で水が徐々に放出された可能性が高いことがわかりました。本研究で報告されたポリソームの変化によって、観測により報告されている中深部地震の分布を説明できるかもしれないことが示されました。
ポイント
・ 高圧下における蛇紋石(アンチゴライト)の結晶構造を第一原理計算により決定した。
・ アンチゴライトは圧力が増加するにつれて組成・構造が変化することが示された。
・ 沈み込みプレートによって運ばれる蛇紋石は、高圧下で徐々に脱水する可能性がある。
アンチゴライト(m=17)の結晶構造
沈み込み帯におけるアンチゴライトのm値変化(模式図)
論文情報
掲載誌:Journal of Geophysical Research: Solid Earth
題名:First-principles investigations of antigorite polysomatism under pressure
(和訳)第一原理計算による高圧下におけるアンチゴライトのポリソマティズム
著者:Jun Tsuchiya, Taiga Mizoguchi, Sayako Inoué and Elizabeth C. Thompson
DOI: 10.1029/2023JB028060, 2024
URL: https://doi.org/10.1029/2023JB028060
本件に関する問い合わせ先
愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
土屋 旬