2024-04-26 京都大学
図1. 複数の生物多様性指標の過去(1900~2015年)と将来(2015~2050年)の各シナリオでの変化傾向。
(a)土地利用変化の影響のみによるもの、
(b)土地利用変化と気候変動の影響の組み合わせたもの。
指標は、全球スケールでの生物種の豊かさ(ΔSγ)、局所スケールでの種の豊かさの平均値(ΔSα )、全球スケールでの生物種ごとの生息適域面積の平均値(ΔHt)、局所スケールでの生物多様性の完全度の平均値(ΔIα )の10年ごとの相対的変化を示す。棒グラフは複数のモデルの平均値を示し、シンボルは個別モデルによる推計値を示す。
ポイント
- 1900年から2050年までの生物多様性と生態系サービス(生態系から提供される人間の利益になる機能や資源)の変化を複数のシミュレーションモデルと指標を用いて多面的に明らかにした。
- 20世紀中、世界の生物多様性は2~11%減、生態系による受粉や栄養保持などの調整サービスは減少した一方、生態系からの食料や木材などの供給サービスは数倍に増加した。
- 今後、持続可能な発展に向けた対策を進めると、生物多様性と生態系の調整サービスの減少を抑えられるが、対策をせずに今の速度で土地開発と気候変動が進むと過去と同じ速度で減少することが示された。
- この結果は地球規模での持続可能な発展に向けた取り組みの重要性を示唆する。
立命館大学、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所、京都大学、国立研究開発法人国立環境研究所が参画する国際研究グループは、複数のシミュレーションモデルと生物多様性指標を用いたモデル比較研究により、1900年から2050年までの150年間の生物多様性と生態系サービスの傾向を多面的に明らかにしました。結果として、20世紀中に世界全体で生物多様性は2~11%減少していました。生態系サービスについては、同期間中に、受粉や栄養保持などの調整サービスは減少した一方、生態系からの食料や木材などの供給サービスは数倍に増加していたことがわかりました。将来については、健康的な食事への移行、土地の作物生産性の向上、追加的な環境保護政策の実施などの持続可能な発展に向けた対策は、生物多様性の損失を抑え、生態系サービスを向上させることが示されました。一方で、対策を実施せず今の速度で土地開発と気候変動が進んだ場合、生物多様性と生態系サービスへの悪影響は今後も過去と同じ速度で継続することがわかりました。この結果は、生物多様性条約の目標達成に向けた追加的な対策の必要性を示唆しています。本研究成果は、2024年4月26日にScience誌でオンライン公開されました。
研究詳細
持続可能な発展に向けた対策は生物多様性の損失を抑え生態系サービスを向上させる
研究者情報
藤森 真一郎
書誌情報
タイトル
Global trends and scenarios for terrestrial biodiversity and ecosystem services from 1900-2050
著者
Pereira, H. M., …, Fujimori, S., …, Hasegawa, T., …, Hirata, A., …, Matsui, T., …, Ohashi, H., …, Takahashi, K., ほか49名
掲載誌
Science(2024年4月)