2024-03-27 物質・材料研究機構,Seagate Technology,東北大学,科学技術振興機構
NIMS、Seagate Technology (米国メーカー) 、東北大学の研究グループは、データセンタの記録装置として用いられるハードディスクドライブ (HDD) において、磁気記録媒体を3次元化することで多値記録が可能であることを実証しました。
概要
- NIMS、Seagate Technology (米国メーカー) 、東北大学の研究グループは、データセンタの記録装置として用いられるハードディスクドライブ (HDD) において、磁気記録媒体を3次元化することで多値記録が可能であることを実証しました。IoTやDXに伴う記録媒体容量拡大の需要が高まる中、この実証は重要な意味を持ちます。
- 現在、HDDは垂直磁気記録方式が用いられており、記録密度を現在の1.5 Tbit/in2 (テラビット/平方インチ) よりも飛躍的に増やすことができる磁気異方性の高い鉄白金 (FePt) を用いた熱アシスト磁気記録方式 (Heat-Assisted Magnetic Recording, HAMR) が、Seagate Technology社により実用化されています。しかし、このHAMRでさえ10 Tbit/in2を超える超高密度磁気記録は困難とされています。そのため、10 Tbit/in2級の超高密度磁気記録には、新しい原理の磁気記録方式が望まれています。
- そこで当研究グループは3次元磁気記録法を提案しました。この方式は、従来の2次元記録層とは異なり、記録層を3次元的に積層することで記録密度を大幅に増加させます。現在のHAMR媒体は、非磁性の非晶質炭素マトリックス中に数nm (ナノメートル) の粒子状FePtを均一に分散させた2次元記録層からなります。この研究では、同様に非晶質炭素中に分散したルテニウム (Ru) 粒子をスペーサーとすることで、格子整合したFePt/Ru/FePtの単一粒子を作製し、上下のFePtを独立なものとして、FePtの記録層を3次元的に配置しました。その結果、上下のFePt層がそれぞれ異なる磁化反転とキュリー点を示しました。これは、書き込みレーザーの出力の調整により3次元多値記録が可能であることを意味しています。
- 今後、FePt粒子のダウンサイジング、上部FePt層の配向および磁気異方性の改善、FePt層の更なる多層化を進め、高密度HDDとして実用化に適した媒体構造の実現を目指します。
- 本研究は、NIMS磁性・スピントロニクス材料研究センターのP. Tozman特別研究員、高橋有紀子グループリーダー、Seagate Technology社のThomas Chang研究員、東北大学のSimon Greaves教授によって行われました。
本研究は、科学技術振興機構 (JST) 戦略的創造研究推進事業CREST「情報担体を活用した集積デバイス・システム」JPMJCR22C3の助成を受けたものです。 - 本研究成果は、2024年3月24日付で学術誌「Acta Materialia」誌にオンライン掲載されました。
掲載論文
題目 : Dual-layer FePt-C granular media for multi-level heat-assisted magnetic recording
著者 : P. Tozman, S. Isogami, I. Suzuki, A. Bolyachkin, H. Sepehri-Amin, S.J. Greaves, H. Suto, Y. Sasaki, T.Y. Chang, Y. Kubota, P. Steiner, P.-W. Huanf, K. Hono, Y.K. Takahashi
雑誌 : Acta Materialia
掲載日時 : 2024年3月24日
DOI : 10.1016/j.actamat.2024.119869