2024-03-03 国立天文台
すばる望遠鏡を含む大型望遠鏡を用いた観測により、太陽系の外側にある2つの氷惑星、天王星と海王星の周りで、3つの衛星が新たに発見されました。そのうちの1つは、地上の望遠鏡で発見された中では最も暗い衛星で、すばる望遠鏡によって初めて捉えられました。拡大して表示
図1:2021年9月7日にすばる望遠鏡で撮影された、海王星の衛星 S/2021 N1 の発見画像(画像中央)。この天体の明るさは 27 等で、地上の望遠鏡を用いて発見された中では最も暗い衛星です。HSC を使用して、5分露出の 20 回の撮像を、2時間おきに行いました。世界最大級の望遠鏡によって得られた観測画像を惑星の動きに合わせてずらしながら重ねることにより、天王星と海王星の周囲でこれまでにない深さの探査画像が得られました。元画像はこちら。(クレジット:Scott Sheppard/カーネギー研究所)
研究を率いるスコット・シェパード教授(カーネギー研究所)は、「新たに発見された3つの衛星は、地上の望遠鏡を用いてこれら2つの巨大氷惑星の周りで見つかった衛星としては最も暗い天体です」と語ります。
天王星の新衛星(S/2023 U1)の発見により、天王星を周回する衛星の総数は 28 個になりました。S/2023 U1 は、2023年にチリのマゼラン望遠鏡で発見され、その後、すばる望遠鏡とマゼラン望遠鏡で 2021年に撮影された画像に写っていたことが確認されました。直径わずか8キロメートルと、天王星の衛星の中で最も小さく、公転周期は 680 日です。
海王星の新衛星のうち、明るい方(S/2002 N5)は、直径約 23 キロメートル、公転周期は約9年です。この衛星はチリのマゼラン望遠鏡によって 2021年に発見され、その後、2022年と 2023年の同望遠鏡による追観測で軌道が確認されました。その軌道をたどると、2002年に観測されたあとで見失われていた天体であることが判明しました。
もう1つの海王星の新衛星(S/2021 N1)は、直径が約 14 キロメートル、公転周期は約 27 年です。この非常に暗い天体は、2021年にすばる望遠鏡で初めて発見され、その後、チリの VLT 望遠鏡とハワイのジェミニ望遠鏡での特別な観測時間によって軌道が決定されました。これら2つの新衛星の発見により、海王星の既知の衛星は 16 個になりました(注1)。
新たに発見された3つの衛星は、惑星から遠く、楕円形で傾いた軌道を持ちます。これは、天王星と海王星が幼少期の太陽を取り囲む塵の円盤から形成された直後に、これらの衛星が惑星の重力によって捕獲されたことを示唆しています。
新衛星達はまた、木星や土星の外側の衛星と同様に、天王星と海王星の外側の衛星の中には、似た軌道を持つグループが存在することを示しています。似た軌道を持つグループは、過去に大きな衛星が彗星や小惑星との衝突によって破壊され、元の衛星と似た軌道に破片が残されたことを示唆しています。初期の太陽系は、さまざまな天体間で移動(軌道要素の変化)や衝突が常に起こっている混沌とした場所だったのでしょう。
「木星、土星、天王星、海王星という、太陽系のすべての巨大惑星は、その大きさや形成過程に関係なく、外側の衛星の配置が類似しています。(自転軸が)横倒しになっている天王星ですらそうなのです」とシェパード教授は述べています。
海王星の向こうにある未知の惑星を探査しているシェパード教授は、これらの外側の衛星がどのように捕獲されたかを理解することで、太陽系初期の波乱に満ちた歴史と、外縁領域における惑星移動に関する新たな知見が得られることを期待しています。
本発見は、国際天文学連合 小惑星センターの小惑星電子回報(2024年2月23日付)を通じて発表されました。
(注1)この観測により、天王星と海王星の衛星については、それぞれ直径約8キロメートルと 14 キロメートルのものまでは全て発見されたと考えられます。参考として、木星の衛星は約2キロメートルのものまで、土星の衛星は約3キロメートルのものまでは全て見つかったと考えられます。