最高の熱起電力を持つ分子熱電変換デバイスを開発 ~光量子アルゴリズムにより電流が誘起する分子振動も予測~

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2024-02-13 名古屋大学,科学技術振興機構

ポイント
  • 分子からなる熱電素子において、熱起電力の世界記録(1ミリボルト/ケルビン超え)を達成
  • 理論計算により、10ナノメートルの長さでもトンネル伝導が保たれることを解明
  • 光量子コンピューターで動作するアルゴリズムを用い、電流―電圧曲線の2階微分に現れると期待される分子振動由来の特徴を計算

東海国立大学機構 名古屋大学 大学院工学研究科の大戸 達彦 准教授らの研究グループは、韓国・高麗大学との共同研究で、分子素子としては最高の熱起電力を持つ熱電変換デバイスを新たに開発しました。

廃熱を電気エネルギーに変換する熱電変換技術は、エネルギーの有効利用のために期待されています。与えられた温度差に対して、どれだけの電圧が発生するかの比率は熱起電力と呼ばれ、その指標の向上が求められています。本研究ではルテニウム (Ru)錯体の自己組織化膜を用いることで、これまでの分子熱電素子では報告されたことのなかった、1ミリボルト/ケルビンを超える熱起電力を達成しました。理論計算から、分子軌道準位が電極のフェルミ準位近くに存在し、10ナノメートルに及ぶ長さまでトンネル伝導を維持していることを突き止め、高い熱起電力が達成されることを明らかにしました。将来的にトンネル伝導とホッピング伝導の寄与を詳細に明らかにすべく、光量子アルゴリズムを用いて電流―電圧曲線の2階微分に現れる分子振動由来の特徴を計算しました。

地球上に豊富に存在する有機物が、ナノメートル程度のサイズで大きな熱起電力を発揮することが明らかになったことで、分子設計を工夫し、ウェアラブルな熱電変換機器などの開発につながることが期待されます。

本研究成果は、2024年2月7日付で学術誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(JPMJPR2115)の支援のもとで行われたものです。

<プレスリリース資料>
  • 本文 PDF(567KB)
<論文タイトル>
“Seebeck Effect in Molecular Wires Facilitating Long-Range Transport”
DOI:10.1021/jacs.3c14012
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
大戸 達彦(オオト タツヒコ)
東海国立大学機構 名古屋大学 大学院工学研究科 准教授

<JST事業に関すること>
安藤 裕輔(アンドウ ユウスケ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道担当>
名古屋大学 広報課
科学技術振興機構 広報課

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