惑星はいつ誕生するのか―惑星形成の最初期を捉える

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2023-06-28 国立天文台

19の原始星を取り巻く円盤19の原始星を取り巻く円盤。うち1つは連星のそれぞれの円盤を別に表示している。円盤は、左上ほど若く右下ほど進化が進んでいる。右下の最も進化した2つの円盤には、淡いリングと隙間の構造が見られる。それぞれの画像の右下にある灰色の実線の長さは、地球と太陽の距離の20倍を示している。(クレジット:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), N. Ohashi et al.) オリジナルサイズ(1.0MB)


誕生から1万年ないし10万年程度という最初期の段階にある19の原始星をアルマ望遠鏡で観測し、それらを取り巻く円盤の詳細な構造を初めて統計的に調べました。その結果、これらの円盤では惑星系形成の兆候が見られないか、見られたとしてもそれほど惑星系形成は進んでいないことが推測できました。このことは、惑星系の形成は、中心の恒星が作られ始めてから10万年から100万年後の間に急速に進むことを示しています。

太陽程度の質量の恒星が作られる際、恒星の周囲に円盤ができ、その円盤の中で惑星が形成されると考えられています。近年、アルマ望遠鏡などによる観測で、誕生から100万年以上たった若い星を取り巻く「原始惑星系円盤」と呼ばれる円盤に同心円状の塵(ちり)のリングや隙間が見つかっています。このようなリングや隙間は、形成途中の惑星が円盤内の物質を掃き集めながら成長しつつある証拠とされています。円盤は恒星の誕生から数百万年後には消失してしまいますが、その間のどの段階で惑星が形成されるのかは、まだはっきりとは分かっていません。

国際研究チームは、誕生から1万年ないし10万年程度の最初期の段階にある原始星を取り巻く円盤に着目し、地球から650光年以内という近傍に位置する19の原始星について、アルマ望遠鏡を用いた高解像度の観測を行いました。その結果、これらの原始星でも、より進化が進んだ天体と同様に円盤が存在すること、しかし惑星系形成の指標となるリングや隙間は、比較的進化が進んだ数個の天体でしか見られず、たとえ存在していたとしても非常に淡いことが分かりました。さらに、多くの円盤は塵が円盤面に集中せず厚みを持っていることも分かりました。進化が進んだ天体の円盤の厚みは薄いことから、今回観測した天体は惑星形成の準備がまだ整っていないことになります。

研究チームの中心である台湾中央研究院の大橋永芳(おおはし ながよし)リサーチ・フェローは、「アルマ望遠鏡の観測から、原始星周囲の円盤と、より進化の進んだ原始惑星系円盤との間に、このような明確な違いが見られるとは正直予想していませんでした」と語ります。1つの円盤を観測しただけでは、たまたまその天体の惑星形成が早かったり遅かったりする可能性もあります。本研究では、原始星から若い星へと進化する、恒星が作られ始めてから10万年から100万年後の間に惑星系形成が急速に進むことを、多数の円盤を観測して統計的に扱うことで初めて明らかにしました。

本研究の初期成果は18編のシリーズ論文として出版予定であり、そのうちの概要を解説したOhashi et al. “Early Planet Formation in Embedded Disks (eDisk). I. Overview of the Program and First Results”をはじめ他3編(Lin et al., van ‘t Hoff et al., Yamato et al.)が、米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に2023年6月28日付で掲載されました。さらに1編(Kido et al.)が近日中に掲載される予定です。

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