高速増殖原型炉「もんじゅ」廃止措置で得た知見を高速炉実証炉の設計に反映へ~高速炉実証炉の燃料取扱設備の高度化~

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2023-03-09 日本原子力研究開発機構,日本原子力発電株式会社,三菱FBRシステムズ株式会社,富士電機株式会社

本件は、経済産業省からの受託事業の一環として取りまとめたものであり、原子力学会2023年春の年会にて発表内容を報告するものです。

【発表のポイント】

  • エネルギー資源の乏しい我が国におけるエネルギーの安定供給の観点から、高速増殖原型炉「もんじゅ」*1の設計、建設、運転、保守等を進めてまいりました。現在は廃止措置の作業を進めています。
  • 「もんじゅ」の廃止措置の第1段階(炉容器からの燃料体の取出し~燃料池への貯蔵)では、「もんじゅ」の運転開始以降で初となる作業もありました。それらの作業を経ることで、燃料取扱システム全体の各機器の性能や運転へのナトリウムの影響など、運転・保守・不具合対応に関係する様々な知見を得ることができました。
  • 「もんじゅ」の廃止措置で得た知見に基づき、高速炉実証炉の燃料取扱設備への反映事項の抽出を行いました。

高速増殖原型炉「もんじゅ」廃止措置で得た知見を高速炉実証炉の設計に反映へ~高速炉実証炉の燃料取扱設備の高度化~

「もんじゅ」廃止措置で得た知見を高速炉実証炉へ反映

【概要】

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:小口正範 以下、「JAEA」という)高速炉・新型炉研究開発部門の暦本技術副主幹らは、日本原子力発電株式会社、三菱FBRシステムズ株式会社及び富士電機株式会社とともに、高速増殖原型炉「もんじゅ」廃止措置で得た知見に基づき、高速炉実証炉の燃料取扱設備の概念設計への反映事項を抽出しました。

ナトリウム冷却高速炉(以下、高速炉という)は、高い信頼性、経済性等を実現する第4世代原子力システム*2の、有望な技術のひとつです。エネルギー資源の乏しい我が国におけるエネルギーの安定供給の観点から、JAEAは高速増殖原型炉「もんじゅ」の設計、建設、運転、保守等を進めてまいりました。

2016年12月、「もんじゅ」は廃止措置に移行することが示されました。しかし、高速炉開発を進めていくにあたって必要となるナトリウム取扱技術の高度化等の技術・知見は、「もんじゅ」の廃止措置を通じて蓄積していく事が可能です。

「もんじゅ」の廃止措置の第1段階では、燃料体を炉心から取り出し炉外燃料貯蔵槽へ移す「燃料体の取出」と燃料体を炉外燃料貯蔵槽から取り出して洗浄し、燃料池へ貯蔵する「燃料体の処理」作業があります。

特に「もんじゅ」における「燃料体の処理」作業は、廃止措置への移行前の実績はごくわずかで単発の作業でした。したがって、廃止措置が始まって以降の「燃料体の処理」の作業は、初めての連続的かつ継続的な作業となりました。

この「もんじゅ」の廃止措置で得た運転・保守・不具合対応等の知見(燃料取扱システム全体としての各機器の性能確認、燃料取扱に関係するナトリウム生成物による運転への影響)を、高速炉実証炉の機器性能の目標設定及び不具合防止の為の設計・運用改善等、高速炉実証炉の燃料取扱設備の概念設計への反映事項を抽出しました。

本研究成果は、2023年3月14日付けで日本原子力学会春の年会において発表予定です。

【今回の結果】

「もんじゅ」は、ナトリウムを冷却材に用いたナトリウム冷却高速炉です。アルカリ金属であるナトリウムは熱伝導性が高く構造材との共存性が良いなど冷却材として優れた性質を持つ一方、空気中の酸素や水分との反応性が高いため、ナトリウムが存在する機器内は不活性ガスであるアルゴンガスの雰囲気で管理されます。燃料体をナトリウム中から別の設備へ移送する際は、ナトリウムの付着した燃料体や機器が空気に接しないように、機器同士の接合部の気密性を確保し、アルゴンガスの雰囲気下で行います。

このためナトリウム冷却高速炉の燃料取扱設備は気密性管理のもとで燃料体を取扱う必要があり、原子炉容器を開放して燃料体を取出す軽水炉の燃料取扱設備と比較して構造が大きく異なります。

高速炉実証炉のプラント設計は、ナトリウム、燃料体の取扱いの基本技術において「もんじゅ」と共通しています。「もんじゅ」の燃料体取出し作業で得た知見は、高速炉実証炉の燃料取扱設備の設計に大きく寄与できます。

「もんじゅ」の廃止措置の第1段階(「燃料体の取出」・「燃料体の処理」)において、運転・保守・不具合対応等に関係する知見を得ました。それらの知見を整理した結果、燃料体の取り扱いに関係するシステム全体のうち燃料移送時間や冷却性能のデータ等の各機器の性能確認、ナトリウム生成物による運転への影響を考慮した燃料出入機やドアバルブ等の設計改善等を、高速炉実証炉への反映事項として抽出することができました。

これら反映事項の抽出により、高速炉実証炉において燃料取扱設備の稼働率向上に寄与するとともに、冷却材として優れた性質を持つナトリウムの付着した燃料体をより安定的に取り扱うことが可能となります。

【今後の展望】

「もんじゅ」廃止措置の第1段階「燃料体取出作業」を2022年10月に完了しました。

今後は、「もんじゅ」廃止措置の第2段階「解体準備作業」として、ナトリウム機器の解体準備、水・蒸気系等発電設備の解体撤去、汚染の分布に関する評価を進めてまいります。第2段階で得た知見についても、高速炉実証炉の概念設計に活かしていきます。

【助成情報】

本件は、経済産業省からの受託事業「令和3年度 高速炉に係る共通基盤のための技術開発事業」の一環として実施したものです。

用語説明

*1 高速増殖原型炉「もんじゅ」:
「もんじゅ」は、電気出力28万kWのプルトニウム・ウラン混合酸化物燃料を用いるループ型ナトリウム冷却高速増殖炉の原型炉です。1994年に初臨界しましたが、1995年に40%出力運転中に2次系ナトリウムの漏えい事故が発生しました。 以降およそ14年間、運転を停止していましたが、2010年にゼロ出力での性能試験を再開しました。 その後、運転再開を目指し、東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえた安全評価・安全対策などに取り組んでおりましたが、平成28年12月に「もんじゅ」の取扱いに関する政府方針が決定され、これに従い、廃止措置の作業に着手しました。

*2 第4世代原子力システム:
第4世代原子力システム:燃料の効率的利用、核廃棄物の最小化、核拡散抵抗性の確保等エネルギー源としての持続可能性、炉心損傷頻度の飛躍的低減や敷地外の緊急時対応の必要性排除など安全性/信頼性の向上、及び他のエネルギー源とも競合できる高い経済性の達成を目標とする次世代原子炉概念です。ナトリウム冷却高速炉の他には、高温ガス炉や溶融塩炉などが該当します。

2001原子炉システムの設計及び建設
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