世界初、HVPE法で6インチウエハ上への酸化ガリウム成膜に成功~パワーデバイスの低コスト化と次世代EVの省エネ化に貢献~

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2022-03-01 新エネルギー・産業技術総合開発機構,大陽日酸株式会社,東京農工大学,株式会社ノベルクリスタルテクノロジー

NEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」において、大陽日酸(株)は東京農工大学および(株)ノベルクリスタルテクノロジーと共同で、次世代半導体材料として注目される酸化ガリウム(β-Ga2O3)をハライド気相成長(HVPE)法によって6インチウエハ上に成膜することに世界で初めて成功しました。

この成果は、大口径かつ複数枚のエピウエハを製造可能なβ-Ga2O3量産成膜装置の開発を大きく進展させ、成膜コストが課題となっていたβ-Ga2O3エピウエハの大口径・低コスト化の実現に繋がります。β-Ga2O3パワーデバイスが広く普及すれば、産機用モータ制御のインバーターや住宅用太陽光発電システムのインバーター、次世代EVなどの省エネルギー化が見込めます。

図1 6インチテストウエハ上に成膜したβ-Ga2O3薄膜

1.概要

酸化ガリウム(β-Ga2O3※1は、炭化ケイ素(SiC)※2や窒化ガリウム(GaN)※3と比べてさらに大きなバンドギャップ※4を持つため、β-Ga2O3によるトランジスタやダイオードは高耐圧や高出力、高効率(低損失)といった優れたパワーデバイス※5特性を備えるものとして期待されています。β-Ga2O3パワーデバイスの開発は日本が世界をリードしており、2021年には株式会社ノベルクリスタルテクノロジーがハライド気相成長(HVPE)法※6を用いた小口径4インチβ-Ga2O3エピウエハ※7の開発に成功し、製造・販売※8を行っています。このエピ成膜のベースとなるβ-Ga2O3ウエハはSiCやGaNと異なり、バルク結晶の育成が速い融液成長で製造可能なことから、大口径・低価格なβ-Ga2O3ウエハを得やすくパワーデバイスの低価格化に有利となります。

しかし、β-Ga2O3の成膜に採用されているHVPE法は安い原料コストや高純度成膜が可能である反面、HVPE法による成膜装置は小口径(2インチまたは4インチ)かつ枚葉式のものしか実用化されていないという課題があります。このため、成膜コストを低減するためにはHVPE法による大口径(6インチまたは8インチ)でバッチ式の量産装置の実現が不可欠とされてきました。

このような背景の下、大陽日酸株式会社はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「戦略的省エネルギー技術革新プログラム※9/次世代パワーデバイス向け酸化ガリウム用の大口径量産型エピ成膜装置の研究開発」プロジェクトにおいて、β-Ga2O3を成膜するための大口径量産型エピ成膜装置(量産装置)の開発に取り組んできました。本プログラムのインキュベーション研究開発フェーズ(2019年度)においてHVPE法の原料となる金属塩化物※10の外部供給技術※11開発を行い、実用化開発フェーズ(2020年度~2021年度)において量産装置の基礎技術確立のため、6インチ枚葉式HVPE装置を立上げ成膜を行い、その評価を実施しました。そしてこのたび、世界で初めて6インチウエハ上へのβ-Ga2O3の成膜に成功しました。

2.今回の成果

大陽日酸(株)は6インチ枚葉式HVPE装置(図2)を開発し、世界で初めて6インチテストウエハ(サファイア基板を使用)上へのβ-Ga2O3成膜に成功(図1)しました。

また、成膜条件の最適化や独自の原料ノズル構造の採用により、6インチテストウエハ上におけるβ-Ga2O3成膜の実証、およびβ-Ga2O3膜厚分布±10%以下を達成するなど面内で均一な成膜が可能であることも確認しました(図3)。本成果で確立した大口径基板への成膜技術やハードウエアの設計技術によりβ-Ga2O3成膜装置のプラットフォームを構築できるため、大口径バッチ式量産装置の開発を大きく進展させることが可能となりました。これにより、β-Ga2O3成膜プロセスおよびデバイスの適用による消費電力削減によって、2030年時点で21万kL/年程度の省エネルギー効果量が見込まれています。

図2 開発したβ-Ga<sub>2</sub>O<sub>3</sub>成膜向け6インチ枚葉式HVPE装置の外観写真の画像

図2 開発したβ-Ga2O3成膜向け6インチ枚葉式HVPE装置の外観写真

図3 6インチテストウエハ上におけるβ-Ga<sub>2</sub>O<sub>3</sub>の膜厚分布の画像

図3 6インチテストウエハ上におけるβ-Ga2O3の膜厚分布

3.今後の予定

大陽日酸(株)は、NEDO事業においてβ-Ga2O3成膜向け量産装置の開発を継続し、今後は6インチβ-Ga2O3ウエハを用いたエピ成膜を行い、β-Ga2O3薄膜の電気特性評価や膜中に存在する欠陥評価を通して、高品質なβ-Ga2O3エピ成膜技術の開発を実施します。また、β-Ga2O3エピウエハの量産技術を確立した後、2024年度に量産装置の製品化を目指します。HVPE法で製造したβ-Ga2O3エピウエハは主にSBD※12やFET※13に使われるため、2030年度には約590億円規模の市場に成長する見込みです(株式会社富士経済「2020年版次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来展望」による)。今後は量産装置を実現し、β-Ga2O3成膜装置市場への参入とGa2O3パワーデバイスの普及による次世代EVなどの省エネルギー化促進に貢献していきます。

NEDOは、今後も経済成長と両立する持続可能な省エネルギーの実現を目指し、「省エネルギー技術戦略」で掲げるエネルギー・産業・民生(家庭・業務)・運輸部門などにおける重要技術を中心に、2030年には高い省エネ効果が見込まれる技術について、事業化までシームレスに技術開発を支援します。

【注釈】
※1 酸化ガリウム(β-Ga2O3
酸化ガリウムは、炭化ケイ素と窒化ガリウムに続く「第3のパワーデバイス用ワイドバンドギャップ半導体」として注目を集めている化合物半導体です。パワーデバイスとしての理論的な性能がシリコンよりも圧倒的に高く、炭化ケイ素と窒化ガリウムをも超える優れた材料です。
※2 炭化ケイ素(SiC)
SiCは炭素とケイ素の化合物であり、主に高耐圧・大電流用途で使用されるワイドバンドギャップ半導体材料です。
※3 窒化ガリウム(GaN)
GaNはガリウムと窒素の化合物であり、SiCよりもさらに安定した結合構造を持ち、より絶縁破壊強度が高いワイドバンドギャップ半導体です。主にスイッチング電源などの小型・高周波用途で使用されます。
※4 バンドギャップ
電子やホールが価電子帯から伝導帯に遷移するために必要なエネルギーのことです。この値が大きい半導体をワイドバンドギャップ半導体と位置付け、バンドギャップが大きいほど絶縁破壊強度が高くなります。β-Ga2O3のバンドギャップは約4.5eVであり、Si(1.1eV)、4H-SiC(3.3eV)およびGaN(3.4eV)よりも大きな値となっています。
※5 パワーデバイス
電力の変換に用いる半導体素子のことであり、インバーターやコンバーターなどの電力変換器に用いられています。
※6 ハライド気相成長(HVPE)法
金属塩化物ガスを原料に用いる結晶成長方法のことです。高速成長や高純度成膜が可能であることが利点です。
※7 β-Ga2O3エピウエハ
ウエハ上にβ-Ga2O3を成膜した薄膜形成ウエハのことです。ウエハとなる結晶の上に結晶成長を行い、下地のウエハの結晶面にそろえて原子配列する成長をエピタキシャル成長(エピ成長)と呼びます
※8 4インチβ-Ga2O3エピウエハの開発に成功し、製造・販売
(参考)株式会社ノベルクリスタルテクノロジー 2021年6月16日付ニュースリリース
高品質 β 型酸化ガリウム 100mm エピウエハの開発に成功
※9 戦略的省エネルギー技術革新プログラム
概要: 戦略的省エネルギー技術革新プログラム
※10 金属塩化物
HVPE法の金属原料となる化合物であり、代表的な金属塩化物としてGaCl、GaCl3、AlCl、AlCl3、InCl、InCl3などがあります。
※11 外部供給技術
HVPE法において、金属塩化物生成部と成膜部を独立分離させ、反応炉外部から配管などを用いて金属塩化物を供給する技術のことです。
※12 SBD
ショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)。PN接合ではなく、ある種の金属とn型半導体の接合を用いたダイオードのことです。他のダイオードに比べ高効率でありスイッチング速度が速いことが利点です。
※13 FET
電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)。ゲート電極に電圧を加えることでチャネル領域に生じる電界によって電子または正孔の密度を制御し、ソース・ドレイン電極間の電流を制御するトランジスタのことです。
4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 省エネルギー部 担当:北井
大陽日酸株式会社 担当:内藤
東京農工大学 担当:熊谷
株式会社ノベルクリスタルテクノロジー 担当:佐々木

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:鈴木、坂本、橋本、根本

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