2021-11-16 京都大学
高温超伝導線は、液体水素や液体窒素の温度で電気抵抗がゼロになり非常に高い密度で電流を流せるため、モータなどの電気機器の高効率化・軽量化・コンパクト化に役立ち、脱炭素に貢献します。しかし、交流の磁界の下で使ったときに発生する交流損失と呼ばれる損失が、電気機器へ応用する上で障害となっていました。
雨宮尚之 工学研究科教授、古河電工グループ(古河電気工業株式会社、SuperPower Inc.)の研究グループは、高温超伝導線の薄膜状の超伝導体を細いフィラメントに分割しその上に銅をめっきしたマルチフィラメント薄膜高温超伝導線(図1(b))を、細いコア(芯材)のまわりにスパイラル状に巻くことで(図2)、超伝導体の中に侵入した細い磁束の線(磁束量子線)の移動距離を抑えました。これにより、磁束量子線の移動に伴う摩擦発熱のような交流損失を、標準的な薄膜高温超伝導線に比べて約20分の1に低減することに成功しました。本研究グループは、この技術を適用した、図3に示すようなSCSCケーブル(ダブルSCケーブル)と名付けた低損失で大電流を高密度で流すことができる導体の開発を進めており、これを用いた高温超伝導電気機器の実用化による脱炭素への貢献が期待されます。
本研究成果は、2021年11月16日に、福岡県福岡市で開催される「第27回マグネット技術国際会議」において発表されます。
研究者情報
研究者名:雨宮尚之