(NIST Sensor Experts Invent Supercool Mini-Thermometer)
2020/11/17 アメリカ合衆国・国立標準技術研究所(NIST)
・ NIST が、小型の超伝導温度計を開発。
・ 同温度計は二酸化ケイ素(SiO2)でコーティングした超伝導のニオブ共振器で構成。SiO2 コーティングと共振器の相互作用により周波数が自然な共鳴へと変化する。これは 2 箇所間を原子が「トンネリング」する量子力学的効果によるものと推測。共振器の固有周波数が温度によって変わるという原理を応用し、電子機器で測定した周波数の変化と温度を関連付ける。
・ 同温度計では、1 ケルビン(-272.15℃・-457.87℉)を下回る、50 ミリケルビン(mK)の計測が可能(将来的には 5mk も)。チップスケールデバイス用の従来の極低温温度計よりも小型で、約 5 ミリ秒の高速計測で利便性が良く、3 インチ(約 75mm)のシリコンウェハーでの 1,200 超のフィッティングでシングルプロセスステップによる量産も可能。
・ 僅か 2.5mm×1.15mm のサイズで、極低温マイクロ波デバイスに埋め込みまたは取り付け、チップに搭載して温度を計測する。同温度計の実証では、超伝導マイクロ波増幅器で正確かつ高速に熱を計測した。
・ 従来の極低温温度計は電気抵抗をベースとし、室温下の電子機器への配線が必要なため、複雑化に加え加熱や干渉の問題がある。また、計測速度は約 1/10 秒。
・ 新温度計技術は、望遠鏡カメラ(ノースウェスタン大学の BLAST・サブミリ波望遠鏡およびマサチューセッツ大学アマースト校の TolTEC・高速高感度偏光カメラ)用の、NIST 製のカスタム超伝導センサーより派生したもの。
・ 電気接続を多用することなく僅かなコストで様々なコンポーネントの温度をテストパッケージで計測できるようになるため、量子コンピューティングや低温度センサー分野の研究に役立てられる可能性がある。超伝導ベース量子コンピューターのプロセッサチップの温度モニタリングのアプリケーションが期待できる。
URL: https://www.nist.gov/news-events/news/2020/11/nist-sensor-experts-invent-supercoolmini-thermometer
<NEDO海外技術情報より>
(関連情報)
Applied Physics Letters 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Sub-kelvin thermometer for on-chip measurements of microwave devices utilizing two-level systems
in superconducting microresonators
URL: https://aip.scitation.org/doi/10.1063/5.0029351